[122]すべての道は中国に通ず

 先日、台湾に中国本土から初めて旅客機が乗り入れたというニュースをやっていました。政治的には緊張の続く台湾と中国本土ですが、中国本土でビジネスをしている台湾人は家族を含めると 100万人と聞きます。彼らは今まで香港やマカオ、あるいは日本を経由して中国本土へ行かねばなりませんでした。2002年度の対中投資額を見ても台湾は日本より 6億ドルほど多いので、ビジネス面では良きパートナーどうしで、旧正月の帰省のためのチャーター便とはいえ今後の定期便運行への布石となることでしょう。
 中国の沿岸部が発展した理由として交通の便というのがまずあげられるでしょうが、現在中国政府ではスーパー・ハイウェイ計画に着手し始めました。北京から武漢を通り香港につながるハイウェイ、上海と香港を結ぶハイウェイ、雲南省の昆明からシンガポールまで結ぶハイウェイ、香港と四川省成都を結ぶハイウェイなどです。黄河、揚子江、珠江など大河に沿った地図で見ると左右に広がる伝統的な交通網とは違い、縦方向の交通網を作るという壮大な計画です。このスケールに比べると日本の道路公団の民営化問題は何だか次元が低すぎるように思えます。


 一般の方々は中国とアセアン諸国のつながりをあまり理解しておられないと思いますが、中国と国境を接しているのはベトナム、ラオス、ミャンマーで、その南にタイ、カンボジアがあり、マレーシアのあるマレー半島、そして先端のシンガポールにつながります。各国の道路網も整備されれば、島のアセアン諸国(インドネシア、ブルネイ、フィリピン)以外はすべて陸路で中国とつながることになります。この事実は島国日本としては物理的に努力のしようがないだけに疎外感を覚えざるを得ません。
 たしかに今までの日本は世界の大国米国から見てロシア(旧ソ連)、中国、朝鮮半島を臨む「東アジアの自然の要塞」という地政学的なメリットを生かして繁栄してきたとも言えます。その米国ですら、第2期目を迎えるブッシュ大統領の一般教書演説にも「日本」という言葉はありませんでした。
 私自身は中国と東南アジアを中心に仕事をしていますが、彼らの平均経済成長率は年6%強あります。一方、日本人はゼロ成長に慣れきって閉塞感、あるいは怠惰、厭世観に満ち満ちています。世界第2位の経済大国でありながら、子育ての難しさについてアンケートをとるとほとんどが「経済的な負担」、また婚期の遅れる理由の 2割が「経済的な理由」というお金に飢えた国民の多い国でもあります。
 ローマ帝国が繁栄した頃「世界の道はローマに通ず」と言われましたが、いよいよ世界の道は中国に通じる時代がやって来るのでしょうか。日本はどういう形で世界への道路をつなげて行くのでしょうか。
河口容子
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