[193]夢を紡ぐ人たち

 2006年 5月25日号「アセアンがくれる LOHASな暮らし」で取り上げた展示会の商談会がありました。アセアン諸国から出展者が一同に集まり日本の企業と商談を行なうためです。私は現在ベトナムでの雑貨づくりをお手伝いしている企業の社長をお誘いしました。この企業の商品は和のテイストを取り入れたものが多いのですが、同じアジアの文化には和の文化と共感する部分はありますし、健康や癒しといったテーマを得意としていることから参考にしていただけるのではないかと思ったからです。
 社長の目にとまったのは、カンボジアのクッションでした。表地は日本のかすりの着物を想い起こさせるような手織りの絹。外繭を使うため糸の太さが均一でないところに独特の風合いがあります。(内繭を使うと信じられないほど細やかな絹織物になります。)クッションの中味は天然の綿がぎっしり詰められ、キルティングのように格子状にしっかりと縫ってあります。天然綿をぎっしり詰めてあるせいか座ってみるとお尻が沈みこまないので背筋がしゃんとします。伝わってくる気合が粗製濫造の工業製品との違いです。
 「私も大好きでプレゼントによく使っています。」と説明をしてくれたのは、このカンボジア企業に勤務している日本人女性です。彼女はもう7年カンボジアに住んでおり、もともとは遺跡の研究者でした。カンボジアの文化に魅せられ販売の仕事に就きました。この企業は従業員が 1,000人おり、もともとは政府が貧しい人の救済のために始めた事業だそうです。民営化した今では、豪華リゾートホテルやフランスのお城の内装も行なっているそうです。カンボジアは暑い時期は45度を越えます。また、「後発途上国」に指定されている世界で最も貧しい国のひとつです。そのような環境の中でおそらく辛いことも何度もあったと想像しますが、少しずつ夢を紡いでいるような印象を受けました。商談ではカンボジア人のスタッフもまじえ英語で話してくれた彼女ですが、スタッフにあざやかなクメール語で指示をしていた姿に日本女性の持つ芯の強さやしなやかさを感じました。
 さて、同行の日本企業の社長からは周囲を見回して「ずいぶん西洋人の出展者も多いのですね。」と質問。カンボジアは内戦で未亡人となった女性、地雷で身障者となった方々をサポートするために現地に住んで技術指導や自立を助ける活動を行なっている西洋人がたくさんいると説明したところ、「素敵な商品の数々、大変参考になりました。将来的には、このようなメーカーと、コラボレーションして、社会貢献という視点からの企業活動も考えてみたいと感じました。」とおっしゃいました。この社長の夢も日本でのものづくりが、中国、そしてベトナムもとグローバル化をとげ、社会貢献へと糸が紡がれつつあります。
 実は私の香港のパートナーも中国の貴州省で少数民族の文化保護の NPO活動を行なっています。貴州省は少数民族が多く中国の中でも最貧省です。ビジネスインフラが悪いために資金源となるビジネスを起すのが難しく本人は「お金をつぎ込むばかり」と苦笑いですが、何とか他の事業で利益を出してあげようといつしか私もパートナーの夢紡ぎのサポーターになっています。
河口容子