仲の良い同業者で時折会合をすることがあります。 JETRO(日本貿易機構)の B2Bサイトのニューズレターにコラムを執筆しているメンバーで、同サイトの運営責任者の女性がスケジュールを調整してくれ、だいたい私が場所のセッティングをするという役回りでもう3~4年続いています。
情報交換はもちろんのこと、なかなか一般の方には本当の苦労がわかってもらえない仕事ですので理解してくれる人がいるうれしさでいつも会は盛り上がります。私も含めて男性 2名、女性 2名の企業経営者がメインのメンバーですが、共通項はサラリーマンとして十分経験を積んで(というより波乱万丈と言えるでしょう)からの独立、自分ひとりでゼロから会社を起こしたこと、社会人になってからずっと国際ビジネスに関与し続けてきたことです。ただし、経歴や得意分野はまったく違いますので、競合は一切なく、お互いに尊敬でき、支え合える仲という点も良い関係が長続きしている理由だと思います。
12月早々に早めの忘年会をしました。世間では特に派遣社員のリストラの話題でもちきりですが、私たちはすべて自己責任ですから、起業したその日から明日失業するかも知れないという不安をどこかに抱きながら毎日を送らざるを得ず、そんな代償を払ってでも組織に依存するのではなく自分のやりたい事に使命感を持って取り組みたいという職業観の持ち主です。「自分ひとりで何ができるか試してみたい」という気持ちが徹夜もいとわず、世界のどこへでも飛んでいく力の源になっています。
私たちはメンバーの O氏がニューデリーに行くと聞かされておりムンバイの同時テロの影響はなかったか心配でしたが、運良くテロの 1週間前の出張だったようです。考えてみれば海外で事故に遭うリスクも大きいのが私たちです。
話題は景気動向にどうしてもなりますが、米国の自動車 3社の救済について私たちの一致した意見は「経営者は莫大な報酬を得ている。今年から1ドルの年俸にしたところで昨年まではたくさんもらっているのだからまずは経営責任を取って返還すべき。」私たちは株主であり、経営者であり、労働者と 3役をこなしているので泣きごとを言う相手がある人が羨ましい限りです。
「ところで日本の景気対策で全世帯へお金ばらまく話はどうなったの?」と私。中国政府に勤務していた中国人の J女史(現在は日本国籍)は「中国では子どもにお小遣いをやるようなものだ、と酷評しています。後で消費税をあげるなら何の意味もない。私は中国の新聞が日本についてどう伝え、日本の新聞が中国についてどう伝えるか必ずチェックしています。これ意外と正しい。」「そうですね。私は人民日報のネット版を日本語で毎日読んでいます。日本に対して好意的な記事が多いのにびっくりします。」と私。
私が 9月に福建省に行った話を J女史にすると「福建は華僑が多いです。でも華僑でお金持ちは広東出身。福建は貧しい省で中国全土でも尊敬されないから福建の人と仕事をする時はおだてることです。」なあるほど、それは得意と勝手に納得。「北京の人は友達になったら一緒に仕事します。無理も聞いてくれます。上海の人は儲かれば誰とでも仕事をします。だから中小企業は上海のほうが進出しやすい。香港の人は広東がテリトリーと思われているから北京の人は香港人が北京に進出しようとすると追い返したがりますよ。香港の人のやり方はまた北京とも上海ともちょっと違う。イギリス式な考え方も入っている。」
「そうそう、福建のホテルで香港人たちが外国人と泊まるフロアを分けられたことで怒っていましたよ。朝、外国人用のカフェにも入れてくれなかったそうです。それはただ言語の問題だけだと思いますが。」「本土の人は香港を本土の一部と思っていますが、香港人はそうではないから。」そこへ JETROの O女史「言葉でしょう。うちの職員で北京語がすごく上手な人が行ったら中国人と間違われてやっぱり入れてもらえなかったって。」全員爆笑。
私たちは不況に強い業種です。特定の企業に依存して生きているわけでも、日本を中心にしたビジネスの組み立てをしているわけでもありません。日本は「不況」と言われれば一斉に「不況モード」に入りますが、海外にはこれをチャンスとばかりに積極的に動き出す人たちも多いからです。また、私たちは日々研鑽と経験を積み上げていきます。また、この経験やスキルは目減りすることもなく、盗まれることもありません。不況を生き抜くには自力、地力、知力が大切だとあらためて感じています。
河口容子