香港のクライアント D氏が奥さんと一緒に東京にやって来ました。奥さんはバリバリのキャリアウーマンというご夫婦で年に 1-2回必ず日本にやって来ます。 D氏は滞在中の半日くらいを私とのミーティングに充てますが、その間奥さんは買い物ざんまいです。香港人としては珍しくおっとりと礼儀正しく、ビジネスの手際もあかぬけている D氏を支えているのはきっと奥さんの知性や行動力、理解と励ましに違いありません。
六本木ヒルズにあるホテルに泊まっている彼らを訪問した際のことです。駐車場からロビーへどう行くかわからずドアマンにたずねようとしたのですが日本語が出て来ません。どうやら頭はすっかり英語モードになっていたようです。しかたがないので英語でたずねました。ドアマンは私をアジア系の外国人と思ったのでしょう。丁重に10数メートル一緒に歩いて案内してくれました。
ロビーで待っていた D氏に「ああ恥ずかしい」とこの事を話すと「大丈夫ですよ。絶対日本人に見えませんから。」「じゃあ、どこの国の人に見えます?香港人?」「香港人じゃないなあ。インターナショナル・アジアン。」おかげでアジアのどこの国に行っても適当に同化して安全です。実家が貿易商であったため外国人と取引するのは当たり前、私の家には日本人と外国人を区別する習慣はありませんでした。そんな環境に加え、親族を見渡すと典型的なお雛様顔もあれば、アセアンっぽい顔、西洋人的な顔と種々雑多で、その遺伝子がまざっているとすればインターナショナル・アジアンに見えても不思議ではありません。
お土産マニアの D氏は香港で春節(中国の旧正月)に食べるというココナツ・ジュースの入ったババロア状のケーキを持って来てくれました。話の途中で咳が止まらなくなった D氏にマスクとトローチを買いに行き「はい、プレゼントです。」と渡すと「ケーキとの交換みたいだね。何かクリスマスみたい。いつもしゃべり過ぎてのどが痛くなるんだ。」と大笑い。
D氏は中国のこれから株式上場をしようとする中小企業のための総合コンサルタント会社を金融コンサルタントの友人と新たに作りました。なぜ上場予定の会社をターゲットにするかと言うとまず財務状況を把握でき支払能力をチェックできます。株式上場には不安要素を掘り起こし問題解決が必要です。コンサルタント費用を惜しむわけにはいきません。もちろん、日本からの技術支援、デザイン支援などはすべて私がコーディネートすることになっているらしく、頼んだ覚えもないのでまさに目パチクリです。どうやら昨年 9月の晋江でのデザイン支援がトライアルだったらしく、私自身も D氏のコンサルタント仲間にもすっかり気に入られてしまったようです。春には啓蒙のためのセミナーの講師にというお話までいただきました。
いただくお話に共感できれば損得はあまり関係なく徹底的に努力をするのが私のやり方です。その結果、いろいろな形で新しいお仕事が展開していきます。「自分探し」という言葉をよく耳にしますが、自分が自分についてわかるのは「好き嫌い」や「やる気があるかないか」だけで、潜在能力や使命については社会とのかかわりあいの中で他人が見つけ、育ててくれている、そんな気がする今日この頃です。
河口容子