香港の国際経営戦略コンサルタント会社のパートナーとしてお呼びがかかったのは2009年 4月 2日号「占い通りの新しい春到来」で書いた通りです。私の役目としては中国の中小企業(ないしは投資家)向けに日本からの技術、デザイン、ノウハウ面での支援です。リーマンショック以来、特に世界中が頼みにしている中国、しかも世界最大規模の市場にあって、さて、どんな案件が来るのかと興味しんしんの毎日でした。私たちのターゲットは借入も含め数千万円から数億円程度を投資できる企業や人ですので、ある程度の規模の事業構築が可能です。以下はここ数ケ月から私が感じたことです。
投資家たちが最初興味を持ったのは「ブランドビジネス」でした。欧米や日本の高級ブランドのライセンス生産をしようというものです。いよいよコピー商品路線からの脱却かと喜んだものの、私は二つの不安がありました。お金を持てば天下を取ったような気分になる中国人(全員とは言いません。そういう傾向が強いと思ってください。)にブランド・イメージを守るためのいろいろな制約に従順に従えるのか、そして、流通関連の仕事をしようとする人は生産そのものに関してはあまり経験がない人が多いのでライセンス商品を作って送り出して行くノウハウがあるのか、です。私の不安は見事というか残念ながらというか的中しました。
また、ある行政機関は先進国のブランドを一同に集めて中国側業者と商談会をやろうと言いだしました。アイデアとしては素晴らしく実現したらたいしたものです。ところが、世界に冠たるブランドが貿易見本市のごとくブースを並べて中国の業者と次から次へと商談をするわけはありません。人気のあるブランドの本社には取引を願う業者が世界中からコンタクトしてくるのです。中国人からしてみればお金を払う側が何でわざわざ頼みに行かねばならないのかまだ十分理解できていないようです。
香港や中国では「欧米や日本とコネがある」というだけで多くの引合いが寄せられます。その意味で上述の会社や香港のビジネスパートナーにとって私はビジネス・チャンスのきっかけを作る意味では貢献しているような気がします。ところがやはり日本の産業構造や流通のしくみを理解できていないことが多いのも事実で2009年 7月30日号「香港トレーダー」で書いた粉ミルクや化粧品のような話が実に多いです。
中国は人脈社会ですので知人友人のネットワークを広げてビジネスを展開するケースが多いのですが、情報収集力がその人脈だけに限られてしまい、いわゆる経済ニュースなどをよく見聞きしていない事も気にかかります。彼らが一生懸命に考え、小規模からぼつぼつ始めようと思ったところで、日本をはじめとする先進国が中国本土ですでに大仕掛けのビジネスを展開しているケースもよくあります。私は毎日人民日報の日本語版をインターネットで読んでいますが、ビジネスを立ち上げるのだったら、そのくらいは常識なのに、と思う事しばしばです。
先進国諸国が経験や知識を駆使して中国市場をものにしようとしのぎを削っている中、中国企業は厳しい競争を強いられます。これはどの途上国にも言えますが、外資は利益が取れなくなれば撤退してしまうリスクがあります。中国の持続的な発展のためにも中国企業の育成が強く求められている気がします。
河口容子
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