[377]輸入から起業へ ふたたび

1月、 2月と 1回ずつ小口輸入のためのマーケティング・セミナーの講師を務めさせていただいております。主催は小口輸入のサポートをずっと行ってきた経済産業省傘下の公的期間です。小口輸入にチャレンジした方がたへのアンケートから国内販売について問題があるとの回答か多いことからこのテーマが決まりました。そもそも小口輸入に関心を持つ方は「海外商品に関心がある」「輸入実務の経験者」「英語など外国語が得意」という傾向があるため、「輸入」の部分にエネルギーが注がれ、国内で販売する事に関しては勉強不足、計画不足という傾向があります。商社マンにとって輸入のポイントは「国内でいかに売るか」で輸入は単なる「仕入の手法」にしかすぎないのです。

私自身は講師業ではありませんので、教え込むというスタンスではなく、自分の経験や考えをまとめる機会、それを聞いていただいた方の何かのヒントになれば幸い、というとらえ方をしています。演壇に上がってからの調子の良し悪しは聴講者の方々の様子が隅々まできちんと見えているか、空気が読みとれているかでわかるのですが、話しながら口からポンポンと例が自然に飛び出すと内心「何であがりもせず厚かましい性格なのだろう」と我ながらあきれてしまいます。資料の余白が真っ黒になるほどメモを取っている方、「うん、うん」とうなずく方、冗談に笑う方など、が確認できるとこの機会をいただけて本当に良かったと感謝の気持ちでいっぱいになります。

そもそも個人で起業をするという事はオールラウンド型の能力が要求され、5段階評価で5もあるが、1もあるという方には向きません。不得手なものでも3のレベルまで引き上げないと世間には通じません。小口輸入をこつこつと続けておられる方に主婦が多いのは家事、育児、家計のやりくりと種々な事をタイムリーにこなす能力がいかんなく発揮されている事や経済的な責任が少なく欲張らずにすむからだと感じています。また、買い物をするのは女性が多い事から女性の心理がわかる、きめ細やかな対応ができる、という点もあるでしょう。

ところが最近のセミナーは圧倒的に男性が多いのです。失業への不安、サイドビジネス狙い、退職後の趣味と実益をかねて、などニーズが多いのは何となくわかります。転職先を求めてさ迷うよりは独立心を大いに評価しますが、ひとりでの起業は究極の自己責任です。「政治が悪い」「社会が悪い」「会社や上司が悪い」と責任転嫁をしがちな日本人にこの自己責任が耐えられるのかどうか少し不安です。

親切な知人や友人たちが何やかやと世話をやいてくれるのも起業後 3-4ケ月のもの珍しいうちだけ、「他人の不幸は蜜の味」国民の日本では「いつ潰れるか楽しみ」な人々がたくさん見守ってくれます。起業したてなら「仕方ない」で済む話も、起業後1年もたって何も成果が出なかったり、泣き言を言ってしまえば完璧に信用を失います。こうして、1年以内に半分が消えていきます。消えずにすむには日々の学びや気づきを改善に取り入れていくしかありません。

小口輸入については2003年8月21日号「輸入から起業へ」と11月27日号「輸入から起業へ・後日談」で触れておりますのでそちらをご参照ください。

河口容子