[047]輸入から起業へ

  JETRO(日本貿易振興会)の地方オフィスとその地域の商工会議所の主催で「IT活用小口輸入実践塾」という企画があり、何とそのゲスト講師の役をおおせつかり、先日2つの都市で講演をして来ました。この塾、いわゆる社会人を対象とした有料のセミナーですが、貿易実務を教えるのではなく、商品選びから売り方まで教え、実際に受講生は自分のお金を出して輸入を行い、希望者には商店街のスペースまでトライアルに用意されるというものです。講師陣はいずれも現役のビジネスマンです。輸入を切り口として新商材をふやす人や起業家を育成して地域の活性化に役立てようというものです。
 小口輸入という言葉は聞きなれない方もいらっしゃるかも知れませんが、個人輸入があくまでも自分のために商品を海外から輸入するのに対し、量や金額は少なくても販売用に輸入するのが小口輸入です。私は国際機関から委嘱され日本で行われるトレードショーのために招聘する企業選定を行い、日本市場向けの商品開発や日本のビジネス慣習に関するアドバイスをするという仕事をアセアン各国で行っています。そして、このトレードショーに来てくださる日本のバイヤーも中小企業の方が圧倒的に多く、その国ならではの特徴をもち、品質がよく、価格もリーズナブルで、少量でも対応してくれる海外企業を私は選定するようにしています。


 バブルの時代を乗り越え「ほとんど必要なモノはすでに所有している」「消費者の目が肥えている」ことを流通業界は個人消費が伸びない理由としています。また、消費者側も「お店に行ってもほしいモノが売られていない」と言います。本当にそうでしょうか。実はインドネシアのメーカーでいただいたバッグを最近好んで使っております。手織りの黒い布と竹、アタを実に巧妙に組みあわせたすばらしいデザインのものです。エアラインのキャビンアテンダントを含め、これを見た女性のほとんどが欲しいと言います。
 なぜ日本で買えないのか。ハンドクラフトであり、大量生産がきかない、品質管理が面倒。布が色おちしてクレームを受けるかも知れない。特に夏場商品は販売期間が短く、輸入業者や販売業者もなるべく面倒でないもの、最大公約数的なものを扱いたがるからです。また、消費者もブランド名や有名な小売店名、あるいはトレンド情報に依存する傾向があり、センスも含め自己責任で商品を選ぶという習慣を持っていません。
 小口輸入がふえれば、大企業の論理では扱えない個性的なもの、消費者のニーズに細かく対応できる商品が市場に出回ってくるはずです。店舗をかまえなくてもインターネットを使うという手もあります。主婦やリタイアされた方なら最初から大きな利益をあげる必要もありません。無理をしなければ起業によって自分も地域も活性化します。アマチュアならではあるいは小手ならではの熱意や発想に期待しています。
河口容子