[059]中国へ押し寄せるライセンスビジネス

 11月 4日から 6日にかけ、東京ビッグサイトで「ライセンス アジア2003」という国際的なライセンスビジネスショーが開かれました。最終日に「香港―中国市場新規参入への掛け橋」というタイトルのセミナーがあり、 1ケ月前に申しこんだところすでに満席となっていたのにはかなりショックでした。実は私と香港のビジネスパートナーは日本のあるキャラクターのライセンスビジネスを中国でスタートさせたばかりで、かなり先見性があると自負していたからです。もちろん、多くの方が関心を持ってくれれば市場は大きくなります。反面、競争も激化するということです。
 現在、アジアのライセンス市場は100億米ドルで、そのうち日本がダントツの 1位で88億米ドルです。2位は桁が違う 6億米ドルとはいえ何と中国なのです。そして、これが2010年には16億米ドルの市場になると予想されます。
 中国におけるライセンス・ビジネスは 76%がキャラクターで 20%が登録商標です。そして対象となる産業(製品)としては玩具およびゲームが 55%、アパレル 53%、文具 40%、子ども用品 39%となっています。チープな商品もあれば偽物もありますが、ライセンス・ビジネスといった知的所有権ビジネスも中国にはいつの間にか育っていることがわかります。
 「中国は日本の何十年前と一緒」というような表現をされる方が結構いらっしゃいますが、それは違います。先月、私たちはある日本の工業団体とジョイントで中国の 4都市で消費者に対する聞き取り調査を行いました。もちろん日本とは経済格差があり、金額ベースでは比較になりませんが、可処分所得率は中国のほうが高いのではないかとさえ思えます。まず、若年層は一人っ子で、 6つポケット(両親と祖父母たち)を持っています。社会主義のお国柄でワーキングウーマンがほとんど、しかも男女の賃金格差はありません。ぜいたくさえしなければ食も住も安い。日本とは社会構造が違うことを見落としてはなりません。
 私自身は会社員時代、米国の巨大スポーツブランドの他、米国のアウトドアアパレルブランド、イタリアのスポーツブランドの担当をしたことがあります。また、欧米のファッションや宝飾品ブランドの交渉経験も数多くあり、知的所有権ビジネスは自分の強みのひとつです。また、ビジネスパートナーは知的所有権を得意とする弁護士です。中国では外国の企業には規制されているメディア・ビジネス(出版、放送など)の権利も持っております。凝り性のパートナーたちは自らライセンサーとなり、おまけに自力で流通網まで作ってしまったので、管理体制も万全のはずですが、いかがなりますことやら。
 キャラクターのライセンスビジネスは製造業と違い空洞化しません。管理さえ失敗しなければ、日本以外にどんどん市場を拡大することができます。また日本ではすたれたキャラクターも違う市場で甦れば、新たな収益を生んでくれるかも知れません。違う市場向けに仕様を変えたキャラクター商品が日本に逆輸入されて人気になる、ということもあるでしょう。アニメやキャラクターは今や日本のお家芸、中国でも日本の新しい顔として活躍してくれるに違いありません。
河口容子

[055]ランゲージ・プロブレム

 インドネシアの自然素材を用いたリビング用品メーカーのオーナーから相談のメールをもらいました。先日のギフトショーでインドネシア政府の貿易機関のコーナーに出展していた企業です。昨年、今年とインドネシア出張の際お世話になった貿易機関の管理職がミッションリーダーで来日しているため、挨拶に行った帰りのことです。彼のブースの日本語の表示が間違っていたのに気づき、訂正してあげたことから知りあいになりました。
 彼いわく、ブースに訪れてくれたお客さんにお礼のメールを出したところ何の反応もない、会場では「日本語さえできれば商売をしてもいい」というような事を言った人が何人かおり、日本語のできるインドネシア人を現地と日本で探したが代理店をやってもいいと言う人が見つからないのでどうしたら良いかと。彼はうまく行かないのは言葉の問題、つまりランゲージ・プロブレムだと思いこんでいるようです。私は言葉だけの問題ではない、と返事をしました。
 まず彼の会社は会場で十分にカタログを用意していませんでした。日本の来場者というのは会場で真剣に商談をして発注していくことはまずありません。だいたいカタログをもらい、質問があればして、会社に帰って情報を整理してから引合に入ります。また、もともと情報収集だけが目的で、バイヤーのふりをしている場合もあります。日本人側からしてみれば、たくさんまわったうちの聞きなれない1社が英語で礼状をくれたところで、カタログももらっていなければ何の会社だったか思い出すことすらないかも知れません。

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