[034]ウェブ・カンファレンス・システム

 先週、香港貿易発展局にウェブ・カンファレンス・システムのデモを見にいって来ました。SARSにより激減している商談を何とかITを使って復活させようと7月末まで無償で同局が提供しているものです。
 かつて会社員の頃、テレビ会議システムを使ったことがありますがこれはお宝グッズに近く、設備そのものといい、通信費といいかなりのもので滅多やたらに使えるものではありませんでした。電話会議は比較的コスト安ですが 3ケ所以上や多数の人間が参加する場合は顔が見えないと進行役の人がかなり苦労します。特に初対面の場合はメールや電話だけではお互いに理解しにくい場合もあります。また、東京-ニューヨークのように半日以上時差がある所どうしではお互いに早出や残業を強いられます。「百聞は一見にしかず」のことわざどおり、情報の伝達手段がいくら発達しても出張が永遠になくならないのはこの辺に理由があります。
 その行きたくても行けないビジネスマンをサポートしようというのがこの試みです。ユーザーは無償で与えられるソフトウェアをダウンロードし、パソコン用のカメラ(1万円程度)を買うだけです。たとえば香港を基点に日本のオフィスと広東省の工場でパソコンの画面に映し出される顔を見ながら会議ができるのみでなく、インターネットのサイトを開きながら説明をしたり、パソコンで作った文書やデータを見せる、メールのやり取りも同時に行うことができます。また、ホワイトボードを使って各々が決められた色のマーカーを持ちデザインをこうしよう、ああしようと討議することも可能です。全機能を駆使しようと思えば千手観音のような技が必要で、とおりいっぺんの形式的な会議に慣れている人やパソコンの初心者にとっては冷や汗ものではないかと推測します。
 しかしながら、デモを見に来られた方がたは無償期間が終了しても業務の効率化に引き続き役立てたいと積極的でした。私自身は何よりもこういうサービスを即無償で主たる取引国すべてに提供するという香港の行政の機転に驚くばかりです。先日、私のオフィスに「香港ファッションウィーク」という見本市の招待状が届けられましたが、初めて来場するバイヤーにはホテルの宿泊費まで負担してくれると書いてありました。旅客の激減した航空会社を救おうと地元小売業界では景品として海外旅行の航空券が使われるなど、ただでさえ景気の低迷している香港が生き残りをかけて一丸となって頑張っているというのが伝わってきます。日本はもう一丸となって頑張る元気さえなくしているのでしょうか、それとも成熟化社会でそういう国民性になってしまったのでしょうか。
河口容子

[032]数字で語る

 米国の多国籍企業と取引をしていた時のことです。この会社は全世界に数百の契約工場を持っています。私が「AとBという工場は船積み書類のミスや送付の遅れが多く輸入通関が遅れがちです。」とその担当本部長に報告をしたところ、すかさず返ってきた答えはこうです。「あなたがミスや遅れが多いという基準は何をもって多いと言っているのですか?たとえば、そのミスというのは何件中何件発生しているのですか?その数値はAとB以外の工場の数値と比べてどのくらい多いのですか?それがなければ工場に対してフェアなクレームができません。」
 実は予想したとおりの回答だったのですが、当時その会社関連の輸入は月に約1000件ありましたので、1ヶ月統計を取ればほぼ正しい数値を得られると思い分析してみました。一時が万事で、船積み書類のミスや遅れがある工場は品質クレームも多いという傾向を見出しました。発注がたくさんかかっている工場は当然ミスも発生する件数は多くなり、数量も多いので目立つのは言うまでもありません。ただ、小口の発注しかないのに異様に書類のミスの比率の高い工場もあり、小口であるがために印象が薄かったということもありました。

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