友人の米国人女性が私の長所を「勇気がある、そして着実にものごとを処理する、そして意欲的に対応できる」こと、「これらはすべて起業家に必要なこと」とほめてくれました。良く言えばそうかもしれませんが、頑固で自我が強いという裏返しにも取れます。
サラリーマンを辞めて起業した3年前には「勇気がありますね。」とからかう年長の男性、「そんな高い給料もらってて、もったいないですよ。」と言う後輩の男性、「定年までおとなしくしていればポストも年収も確保されるだろうに何考えてるの?」と取引先に不思議がられたり、「道楽で自分の会社を始められる人はいいよなあ。」という人まで現れ、おおむね男性の意見はリスクを回避する既得権維持型なものでした。逆に女性は単純に喜んでくれたり、励ましてくれる人が多かった気がします。
30代になった頃、米国人の同年代の女性の起業家ふたりに仕事で出会いました。一人で仕事をかかえ世界中を飛びまわっていました。彼女たちは私に「いつ独立するの?」と聞きました。何とも答えられない私に「一生雇われて暮らしたいわけ?」と軽蔑した顔をされたのが今でも忘れることができません。
しばらくして、日本人の女性の起業家に会いました。彼女は高校を出て銀行に勤務していましたが、自分の趣味を生かすために貯金箱貯金でためた100万円で自分の会社を作りました。(当時は100万円で株式会社が作れました。)そして外国語はほとんど話せないにもかかわらずヨーロッパの会社との代理店交渉に成功しました。
[025]分業社会
新入社員の男子総合職には一般職のアシスタントがつき、課長代理の私にはいない、という冷遇を会社員時代に受けたことがあります。いわゆる女性差別です。自分でお茶を出しながら面談をする、営業のかたわら伝票の入力や発注書の作成など特に月次や年度末の決算期などは事務仕事に追われてんてこまいでしたが、社内の書類の流れやそれぞれの意味、システム上の裏ワザ、営業活動をする上で手続き上おさえておくべき点など、いろいろ学ぶ点がありました。この経験が後日業務のシステム化を行う際に役立ち、また現在の業態にも多いに貢献しています。
産業革命後、大量生産体制が可能となり、効率性から分業という発想が生まれたと思います。大企業ではホワイトカラーも分業体制をとっています。たしかに、同じ業務を大量にこなさなければならない企業なら、分業の方が効率的です。しかし、そうでない場合は、自己完結でやる方が絶対早く、当然コストパフォーマンスも高いということを忘れてはいけません。
たとえば、私が輸出をするとします。総合商社なら営業担当とそのアシスタントが契約の締結と必要な書類作成と入出金の管理をコンピュータで行います。実際の船積書類は受渡という部署なり担当(通関業者からの逆出向者だったりします。)が作成して通関なり船積みの指図をします。実際の入出金行為は財務が行います。他に正しく記帳がなされているかチェックする経理の担当も出てきます。完全な分業体制です。これを私の会社では法人税や消費税の申告に至るまで全部ひとりでやっています。もちろん、人海戦術が必要な時はアウトソーシングしていますが。
なぜひとりでやれるかと言うと、指示や説明を行う時間やレポート作成、社内会議に費やす時間が不要だからです。これはコストの削減という意味では偉大な力を発揮します。現在、大手総合商社から仕入れさせていただいている商品がありますが、彼らはコスト面からもスピード面からも私のビジネスには勝てません。メーカーから売りつなぐのが精一杯です。