[028]勇気、着実性、意欲的

 友人の米国人女性が私の長所を「勇気がある、そして着実にものごとを処理する、そして意欲的に対応できる」こと、「これらはすべて起業家に必要なこと」とほめてくれました。良く言えばそうかもしれませんが、頑固で自我が強いという裏返しにも取れます。
 サラリーマンを辞めて起業した3年前には「勇気がありますね。」とからかう年長の男性、「そんな高い給料もらってて、もったいないですよ。」と言う後輩の男性、「定年までおとなしくしていればポストも年収も確保されるだろうに何考えてるの?」と取引先に不思議がられたり、「道楽で自分の会社を始められる人はいいよなあ。」という人まで現れ、おおむね男性の意見はリスクを回避する既得権維持型なものでした。逆に女性は単純に喜んでくれたり、励ましてくれる人が多かった気がします。
 30代になった頃、米国人の同年代の女性の起業家ふたりに仕事で出会いました。一人で仕事をかかえ世界中を飛びまわっていました。彼女たちは私に「いつ独立するの?」と聞きました。何とも答えられない私に「一生雇われて暮らしたいわけ?」と軽蔑した顔をされたのが今でも忘れることができません。
 しばらくして、日本人の女性の起業家に会いました。彼女は高校を出て銀行に勤務していましたが、自分の趣味を生かすために貯金箱貯金でためた100万円で自分の会社を作りました。(当時は100万円で株式会社が作れました。)そして外国語はほとんど話せないにもかかわらずヨーロッパの会社との代理店交渉に成功しました。


 その後数年して、今度は米国でもたくさん賞を取った女性の大物起業家ふたりと出会うことになります。彼女たちはもともと普通の主婦でした。自分の趣味で作っていた洋服が知人友人の間で評判となり、ビジネスとなり、大企業(ひとつはニューヨーク証券市場の上場企業です)となっていったのです。別に経営のために特別な教育を受けた人でも、叩きあげのキャリアウーマンであったわけでもありません。実に嬉々とし、頭脳明晰、さわやかな経営者たちです。
 確かに彼女たちを見ていると、一見勇気ある人たちのようですが、実に着実で自然になるべくしてなったというか日々の努力が認められたという感じです。そして好きな事を生かしている、つまり日々意欲的にも取り組めるわけです。
 仕事を通じて男性の起業家にももちろんたくさんお会いしますが、失敗される方の多くは、単なる権力志向であったり、一攫千金を夢みたり、自分の能力に対する過信であったりする気がします。等身大の自分が見えていない、自分の嫌な事は避けてしまう、そんな気がします。
 現在、日本の政府も女性の起業家を育成しようとしていますが、日本では家庭内のことは家計のやりくり、家族の健康維持、子供の教育にいたるまで女性が管理する傾向にあり、また最近では有職主婦の比率も高いので外部利益の獲得という概念を知らないわけでもありません。小さな組織の運営はむしろ小回りのきく女性の方が適性があるように思え、女性の活躍に期待しています。
河口容子
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