[123]カントリー・リスク

 今年の 4月で私も貿易生活30年目を迎えます。最近痛感するのは途上国とのビジネスが身近になったことです。昔は、途上国とのビジネスは総合商社や専門商社がその国の権力者や豪商と特定のパイプを持って行なうことがほとんどでしたが、通信手段の発達により、今は誰でも途上国からの引合を手に入れることができます。途上国ほど外貨を稼ぐために熱心に商品を売ろうとしますし、価格的にも魅力があるものが少なくありません。逆に物不足で買いたいという引合もたくさんあり、新規市場を開拓したい企業にとっては「ひょっとして」という期待も抱かせます。
 あるメーカーの責任者からこんな話を聞きました。ある途上国の役所からこのメーカーの製品をほしいという依頼があり、約 1年にわたり何度もサンプルを送りました。テストの結果が良かったので買いたいが予算がつかない、予算がついたとしても L/C(貿易決済に使う銀行保証の信用状)は現地の銀行の信用が低いため日本の銀行では買い取り(現金化)できないと言われたというものです。この責任者は、途上国のためにもなると思って始めたのに時間とサンプルの無駄であり、詐欺にあったようなものだ、だいたい話を持ってきた小さい専門商社を信じたのがいけなかったなどとあちこちに当り散らしていました。

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[120]国に対する好感度

 年末のニュースに中国と韓国に対する日本人の好感度という調査結果が出ていました。中国に対してはあまり芳しくなく、韓国については過去最高の好感度であったようです。理由としては、中国についてはサッカーのアジアカップでの日本やサポーターに対する反日的態度、韓国についてはドラマ「冬のソナタ」のヒットが示すような韓流ブームの影響、と解説されていました。この報道でいくつか感じたことがあります。
 まず、スポーツや芸能という誰にでも目に触れる事象、つまりマスコミでの露出が大きく、多くの人が関心を持って見る事柄で国の印象は変ってしまうということです。会社員時代に経済広報センターという経団連の下部組織が主催する「会社員フォーラム」に10年ほどメンバーとして参加していました。毎年サラリーマンの意識調査として 100項目を6000人以上の協力者にアンケートを取っていましたが、結果を見るまでもなく、直近話題となった事柄、会社員として問題意識を持つべきであろうというような事柄に回答が集中してしまうのです。これぞ、日本人特有の予定調和の世界で、結果を推測した上で妥当な回答をしておこうとする気持ちが働き、個々人の強い意志や意見はないようにも思えます。逆に、まだまだ他の面では中国や韓国との接点がない人が多すぎるとも言えます。
 中国に好感度は持てないと多くの人が答えながら、中国製品に囲まれて暮らしているわけですし、生産基地として市場として中国に関心を持っておられるビジネスパーソン、留学や就職の地として中国を求めている人は少なくありません。外国語としても英語の次には中国語が学ばれています。アンケートの結果とは矛盾する現象です。逆に中国では反日教育がなされていても、日本製品のボイコット運動が起こるわけでもなく、日本企業や日本人が被害に遭うこともめったにありません。日中というのはホンネとタテマエの違う不思議な関係とも言えるでしょう。

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