[120]国に対する好感度

 年末のニュースに中国と韓国に対する日本人の好感度という調査結果が出ていました。中国に対してはあまり芳しくなく、韓国については過去最高の好感度であったようです。理由としては、中国についてはサッカーのアジアカップでの日本やサポーターに対する反日的態度、韓国についてはドラマ「冬のソナタ」のヒットが示すような韓流ブームの影響、と解説されていました。この報道でいくつか感じたことがあります。
 まず、スポーツや芸能という誰にでも目に触れる事象、つまりマスコミでの露出が大きく、多くの人が関心を持って見る事柄で国の印象は変ってしまうということです。会社員時代に経済広報センターという経団連の下部組織が主催する「会社員フォーラム」に10年ほどメンバーとして参加していました。毎年サラリーマンの意識調査として 100項目を6000人以上の協力者にアンケートを取っていましたが、結果を見るまでもなく、直近話題となった事柄、会社員として問題意識を持つべきであろうというような事柄に回答が集中してしまうのです。これぞ、日本人特有の予定調和の世界で、結果を推測した上で妥当な回答をしておこうとする気持ちが働き、個々人の強い意志や意見はないようにも思えます。逆に、まだまだ他の面では中国や韓国との接点がない人が多すぎるとも言えます。
 中国に好感度は持てないと多くの人が答えながら、中国製品に囲まれて暮らしているわけですし、生産基地として市場として中国に関心を持っておられるビジネスパーソン、留学や就職の地として中国を求めている人は少なくありません。外国語としても英語の次には中国語が学ばれています。アンケートの結果とは矛盾する現象です。逆に中国では反日教育がなされていても、日本製品のボイコット運動が起こるわけでもなく、日本企業や日本人が被害に遭うこともめったにありません。日中というのはホンネとタテマエの違う不思議な関係とも言えるでしょう。


 「冬のソナタ」を見たことがなかったので、年末の再々放送で一気に見ました。1960年代、一世を風靡したクロード・ルルーシュ監督のフランス恋愛映画の雰囲気とストーリー的にはバブル時代に流行した生活感のないトレンディドラマの踏襲という感じで、その頃青春時代を過ごした人々のノスタルジーをかきたてるにはぴったりの作品かと思いました。こんな事はあるわけないと思いつつ、見ごたえがあるのは脇役に至るまでの演技力でしょう。
 気づいたことは、高校における制服姿、男子は黒の詰襟、女子は紺色のスカートのスーツ、そして学級委員など日本の植民地政策の影響なのか、ほとんど同じということです。教師を敬うという態度は日本ではすたれていますが韓国にはまだ残っています。また、熟語についてはほとんど音が似ていること、日本語と同じ文法で、20話も見れば、簡単な言葉は覚えてしまい、韓国の近さを再認識させてくれました。
 韓国ではエンターテイメントを始め、コンテンツ産業を国家を挙げて輸出産業にしようとしています。日本は素材産業は世界的に定評があるものの、ファッション・ブランドも含めてソフト面ではまだまだ発信力が弱いような気がします。文化的な産業は一般大衆に指示されやすく、国のイメージ・アップにもつながるとすれば、日本も負けずに海外市場をより意識した商品開発が必要なのではないでしょうか。
関連するエッセイに
2004年8月14号「チームプレイ
2002年7月4日号「国境を越えるミーハー心
があります。関心のある方はバックナンバーをご覧ください。
河口容子