愛知万博の視察もかねて、中国からのミッションが次々と来日しています。省、市(中国には上海のように特別市といって省に属さない市もありますが)、区と行政レベルもまちまちで、月に2回は投資セミナーと商談会、懇親会というようなものが東京の一流ホテルで競うように開かれています。ちまたでは反日運動のニュースが踊っていても、いつもセミナーは大入り満員。商談会や懇親会では異業種交流会のごとく名刺交換があちこちで行なわれています。こんな光景は、反日運動の情報に神経をとがらせている在中国の日本人ビジネスマンや中国ビジネスと無縁の方にはちょっと驚かれるのではないかと思います。
先日は天津市と広州市のミッションがやって来ました。中国では 5千年を見るなら西安、1千年を見るなら北京、 100年を見るなら天津と言うらしく、天津は北京から 120kmの近代史における商都、そして環渤海経済圏の中心でお隣の山東省、遼寧省を合わせると 2億人以上の市場となります。一方、広州市は世界の工場、珠江デルタの広東省の省都、香港とマカオに隣接する中国の「南大門」です。
最近はこうした商談会を通して、大手企業の CEOクラスの方々とお話をさせていただく機会がふえましたが、何千人、何万人規模の企業の特にハイテク系製造業の CEOとなると考え方も欧米企業とほとんど変らない気がします。英語が驚くほどお上手な方もふえています。
ひと昔前までは、日本人と中国人は髪型や服装だけですぐ見分けられたものですが、最近は黙っている限りまったく見分けがつきません。会場である男性が私に中国語で話しかけて来ました。私はその方を中国人だと思い、「私は日本人です。」と中国語で言いました。するとその方も「私も日本人です。」と中国でおっしゃり、その後日本語で話し出したという按配です。あちらは私を中国人と思いこんでいたようです。
このふたつの市のみならず、いつも海外のセミナーで感心するのはきちんと資料ができているということです。手提げ袋にいっぱい資料、最近は書類のみならず DVDがつまっています。時々重くて這うように会場を歩かざるを得ないこともありますが、コストもさることながら準備の時間なども考えると、たいしたものだと思います。
今回、広州市はお茶にお茶碗、お菓子をわざわざ持って来てもてなすという試みをしました。おまけにお茶碗はお持ち帰り用の布を張ったギフトボックス付です。白地に黄色の縁取りでピンクの牡丹の絵が描いてあり、茶托として使う小さなお皿と小ぶりの蓋付のお茶碗です。女性の参加者に大人気でした。
日中関係は長い歴史があるだけに、人間と同じく仲のいいときも悪いときもあったでしょう。しかしながら、今や世界が注目するお隣さん同士であり、不仲はお互いのマイナスとなります。衣食足って礼節を知ると言いますが、お互い大人のスマートなおつきあいが続くことを願ってやみません。
河口容子
[135]外国語学習を楽しむ
今年の 4月から心を入れ替えて NHKのテレビで語学の勉強を始めました。まずは昨年もやった中国語です。文法は簡単と思うものの、なまじ漢字と音読みの音を知っているだけに、正しい音を覚えるのに苦労します。中国語は音調言語で、同じ音でも調子が違えば違う字すなわち違う意味になります。莫大な数の漢字を音と調子の組み合わせで特定しているとも言えますが、同音異義の言葉が多い日本語と比べると合理的な感じもします。
ちょっと覚えるとすぐ使ってみたくなる私ですが、最近は月に 1-2回、中国の公務員や企業トップの方々と次々にお会いする機会があり、挨拶や自分の名前くらいは中国語で言ってみることにしています。そうすると、結構喜んでくださいます。また、「この人はひょっとして結構中国語が理解できるのかも知れない。」とプレッシャーになるのか通訳の方も非常に慎重にお仕事をしてくださるという利点もあります。
次に韓国語です。ほんとうはアラビア語を勉強してみたかったのですが、韓国ドラマを字幕スーパーで見ているうちに、単語や簡単な言い回しは覚えてしまったので調子にのって韓国語に取り組むことにしました。ハングル文字が読めるようになった時は本当に長年の謎が解けたようで今年最大の喜びです。韓国ドラマを見ながら、日本語と同じように、固有の言葉と漢字言葉、そして外来語があるのだろうと思っていましたが、習ってみてそれも大当たりでした。漢字言葉は日本語と非常に音が近く、漢字は中国から朝鮮半島を伝わってきたという歴史を改めて感じることができます。以前、香港のビジネスパートナーが教えてくれましたが、漢字の古い音は広東語や韓国語、日本語に残っているのだそうです。
おまけにインドネシア語です。これは「アジア語楽紀行」という 5分番組ですが、バリ島を舞台に旅行者が必要なインドネシア語を学ぶことができます。たった 5分で美しい風物を見、これだけ言語を覚えられるものかと 5分の貴重さを再認識した次第です。インドネシア語はアルファベット言語ですし、文法も簡単です。 2億数千万人の話者がおり、マレーシアやブルネイで使われているマレー語とは 7-8割が一緒です。
ブルネイのホテルで朝食をとっていた時のことです。マレー風の民族服に身を包んだ小柄なウエイトレスがコーヒーを注いでくれて「日本の方ですか?」と英語でたずねました。「シュガーのことは日本語で何と言うのですか?」「あなたはインドネシアの方ですね。シュガーは砂糖です。インドネシア語の数字の1、サトゥと覚えればいいでしょう。」彼女はゆっくりと微笑みながら「砂糖、砂糖」と繰り返しながら歩いて行きました。
今更、通訳など言語のエキスパートをめざすわけでもなく、予習も復習もほとんどしません。人間は考えるツールとして必ず言語を使います。言語体系の差は考え方の差に通じるのではないかという興味が私にはあります。そして少しでも話せたり読めるるようになれば、より多くその国の文化や日常生活に触れることができます。これが私なりの語学学習の楽しさです。それにしても日語の何と複雑なことか。外国人で日本語の堪能な方を心から尊敬します。
河口容子