[124]セカンド・マリッジ

 香港のビジネス・パートナーの兄弟と離婚の話をしたことがあります。離婚の増加が経済、特に消費生活にどんな影響を与えるかというテーマです。弁護士である弟は「離婚の増加は近代化の象徴」などと茶化しますが、おかげで彼の弁護士事務所も儲かるのでしょう。兄のほうは「離婚をしてそれぞれが別に生活を始めるとすれば不動産から耐久消費財まで需要がふえると言います。日本では最近は夫が家から追い出されるケースが多く、家計を握っているのは妻だから、追い出された夫は買い物なんてできない、と私が言うと彼らが一斉に「日本人の男性は気の毒だなあ」と笑いました。
 以前も書きましたが、中国人の世界では財布のひもはほとんど男性が握っています。そのせいか香港人の女性は夫に離婚されることを極度に恐れているとも言います。離婚に備え、子どもは一人しか産まないという人たちもいます。また、中国本土での離婚率も一気に増加、一方ではいつまでも未婚であることを蔑視する風習も残っていた世代では偽装結婚というか法的には結婚しているものの別居というケースもしばしば耳にします。本土は一人っ子政策世代がどんどん適齢期を迎え、晩婚化は当然のこと、夫婦は別姓ですが子どもは父親の姓を名乗るため、娘の結婚に猛反対する親というのも出現しているようです。自分の姓は消えていくのに相手の姓が繁栄していくのが腹立たしいのかも知れません。

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[123]カントリー・リスク

 今年の 4月で私も貿易生活30年目を迎えます。最近痛感するのは途上国とのビジネスが身近になったことです。昔は、途上国とのビジネスは総合商社や専門商社がその国の権力者や豪商と特定のパイプを持って行なうことがほとんどでしたが、通信手段の発達により、今は誰でも途上国からの引合を手に入れることができます。途上国ほど外貨を稼ぐために熱心に商品を売ろうとしますし、価格的にも魅力があるものが少なくありません。逆に物不足で買いたいという引合もたくさんあり、新規市場を開拓したい企業にとっては「ひょっとして」という期待も抱かせます。
 あるメーカーの責任者からこんな話を聞きました。ある途上国の役所からこのメーカーの製品をほしいという依頼があり、約 1年にわたり何度もサンプルを送りました。テストの結果が良かったので買いたいが予算がつかない、予算がついたとしても L/C(貿易決済に使う銀行保証の信用状)は現地の銀行の信用が低いため日本の銀行では買い取り(現金化)できないと言われたというものです。この責任者は、途上国のためにもなると思って始めたのに時間とサンプルの無駄であり、詐欺にあったようなものだ、だいたい話を持ってきた小さい専門商社を信じたのがいけなかったなどとあちこちに当り散らしていました。

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