先日、台湾に中国本土から初めて旅客機が乗り入れたというニュースをやっていました。政治的には緊張の続く台湾と中国本土ですが、中国本土でビジネスをしている台湾人は家族を含めると 100万人と聞きます。彼らは今まで香港やマカオ、あるいは日本を経由して中国本土へ行かねばなりませんでした。2002年度の対中投資額を見ても台湾は日本より 6億ドルほど多いので、ビジネス面では良きパートナーどうしで、旧正月の帰省のためのチャーター便とはいえ今後の定期便運行への布石となることでしょう。
中国の沿岸部が発展した理由として交通の便というのがまずあげられるでしょうが、現在中国政府ではスーパー・ハイウェイ計画に着手し始めました。北京から武漢を通り香港につながるハイウェイ、上海と香港を結ぶハイウェイ、雲南省の昆明からシンガポールまで結ぶハイウェイ、香港と四川省成都を結ぶハイウェイなどです。黄河、揚子江、珠江など大河に沿った地図で見ると左右に広がる伝統的な交通網とは違い、縦方向の交通網を作るという壮大な計画です。このスケールに比べると日本の道路公団の民営化問題は何だか次元が低すぎるように思えます。
[121]めざせ国際派シニア
退職された技術者、研究者 1万人以上からなるネットワークのアジアでの中国をはじめとするアジアでのビジネス展開のお手伝いを始めて約 1年になります。昨年 2月13日号に書いた「溺れる者はチャイナ・マネーにすがる」をご覧になったある著名TV番組の制作会社の方がたから「今後ほんとうに中国企業による日本企業の買収や投融資がどんどん増えると思いますか」という質問を受けた記憶があります。それから 1年も経過していませんが、もはや誰もが不思議な事とは受け止めていないはずです。
それと同時に優秀な退職技術者の募集も中国をはじめ東南アジア諸国から来ています。私自身は技術者ではありませんが、最新の技術を学んだ人は世界中どこにでもいることはわかっています。ところが、ひとつの企業で新入社員から管理職になるまで何十年という専門的な経験を持っている技術者層が厚いというのは日本しかないのではないかと思います。
貿易の世界も似たところがありますが、貿易を本や学校で勉強したところで、ビジネスに適用する場合はやはり「経験」には勝てない局面が大きいのです。経験はお金では買えないし、盗むこともできません。経験を持っている人は一番の資産家というのを新入社員のときに上司から教えられたおかげで、会社員の間はできるだけこの資産を増やそうと努力しました。同僚からは単なる「仕事中毒」あるいは「点取り虫」に見えたことでしょうけれど。
日本では、バブルの崩壊以降、主として中高年をターゲットとしてリストラが進み、「経験」という尺度は無視されてきました。ところが、途上国においてこの「経験」が高く評価され始めたのは何とも皮肉なことであり、チャンスでもあります。