「世界の工場」と化した中国は世界で唯一元気な国かも知れません。しかし、デザインや商品開発力といったクリエイティブな面、精密性や品質管理といった面ではまだまだ力不足のものもあります。
今、私が香港と中国の市場に向けてやっている仕事の中には日本製品の輸出や、日本のデザインや技術を移転して中国製の中国市場むけの製品を作り、日本企業にはロイヤルティ収入を得ていただくというパターンのものがあります。これは生産コストを下げるために中国で生産し日本で安く売る、ないしは収益性を高めるという発想とは一線を画したものです。工場さがしや中国での販路は当方で用意します、必要なら香港から投資もします、というもので、不況の日本、特に資金力のない中小企業、はては業界団体にいたるまで、関心を持ってくださる方がたくさんいらっしゃいます。
ところが、いざお会いしてみると、日本でビジネスをしている時のままの状態で中国でも仕事がもらえ、イコールお金をもらいたい、という発想の方がほとんどで驚きを通り越して、腹だたしくなる事さえあります。私の任されている香港の企業グループのジャパンオフィスは香港側から経費がすべて出ていて、日本の取引先から1円の手数料をいただくものでもありません。また、私自身もこの経費を切り詰めるのに大変な努力をしております。投資も販売のリスクもなく、何の提案も努力もなく「仕事や売り先を探してほしい」と繰りかえされても、私には甘えか傲慢にしか映りません。
海外と仕事をするという事はリスクがなくてもそれなりの覚悟が必要です。つまり文化や習慣の違いを超えるには、コミュニケーション能力(外国語が話せるという意味ではなく、基本的な伝達能力のことです。)が大切ですし、責任感や自主性といったことも日本人同士でビジネスをするよりはるかに明確にせねばなりません。「何にもわからないのでお任せします。」「そんな事は日本ではやっていませんからできません。」などなど、どちらが社会主義の国の人か疑う始末です。
そんな中でも、「中国市場むけに商品開発もしてみたい」、「価格も下げて販売数量をのばしてみたい」、あるいは「無償でもいいから商品開発の指導をしたい」、「現地なみの価格でもいいからデザインを引き受けてみて市場の勉強をしたい」、「今までこれだけ海外で苦労をして来たのでノウハウとして完成させたい」などとおっしゃる企業があります。彼らから感じるのは夢、希望、努力、大きな愛、そして勇気です。言うまでもなく、これらの企業は日本でも立派に収益をあげておられます。
河口容子
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「運は天にあり、鎧は胸にあり、手柄は足にあり」戦国時代の武将のような気持ちでいつも海外出張には出かけます。鎧は着てはおりませんが、準備を怠るな、気を抜くなと帰国する最後の瞬間まで自分に言い聞かせております。そして、よく動くこと、今年は国際機関の仕事でマレーシア、インドネシア、そしてフィリピンに行きましたが、いわゆる通常のビジネスの出張とは一味違った経験をたくさんさせていただきました。また、中国と香港へも行くことができ、これはビジネスとして着実に成果があがっています。
特に運命の力を感じるのは香港人のビジネス・パートナーとの業務提携です。投資家の兄弟で、兄の学者の方と数年前、まだ会社員だった頃上司の紹介で出会いました。その後、時々メールを交換したりするだけでしたが、6月に彼らのニュービジネスに関する協力依頼があり、1週間もしないうちに弟の弁護士と契約書を作り、10月には彼らの企業グループのジャパン・オフィスの代表になっていた、という按配です。運命がぐんぐん私を引っ張って行く、そんな感じで、不安や不信感は一切ありませんでした。