[348]根強いベトナム・ブーム

 香港向けの輸出が一段落、ライセンス・ビジネスもライセンサーの返答待ちという事で久しぶりに東京都中小企業振興公社が主催するハノイ投資セミナーに行ってみました。ハノイ特別市への投資関連は東京都がタイアップしてサポートする体制になっているのです。主催者名からして中小企業からの参加がほとんどでしょうが、雨にもかかわらず満席に近い出席者にハノイ市計画投資局のファン・バン・クォン副局長が感動しておられました。
 ハノイ市は2008年10月23日号「危機を克服するベトナムと新しいハノイ」でふれたように昨年8月に周辺のハテイ省などと合併し、世界の首都としては17位の大きさになりました。ハノイはもうすぐ遷都1000年を迎えるだけあって4088の歴史遺跡と10の博物館をかかえるアジアの観光都市第 2位、世界ランキングでも13位で、昨年は 130万人が海外から観光に訪れています。その割にはホテル数が少なく、ハイシーズンには私のお気に入りのブティック・ホテルは 1泊約 2万円になってしまいます。現地の物価と比べると異常な気がします。
 インフラ整備も各国の ODAなどで着々と進み、昨年の合併によりハノイ市内にハイテク工業団地 1ケ所、工業団地が28ケ所になりました。 JETROの調査による労働者の賃金を比較すると、北京とクアラルンプールがほぼ同じ、一段下がってマニラとバンコク、深セン、ニューデリー、ジャカルタがほぼ同じでベトナムは月 1万円前後とかなり優位性があります。ただし、近代化とともに賃金上昇は避けられないので、識字率の高さ、理科系のIQの高い国民性、手先の器用さ、対日感情が悪くない、中国や他のアセアン諸国双方に近いという地理的条件をあわせて進出戦略を立てる必要があろうかと思います。
 私自身は全国レベルでの一人あた りGDPが1000ドルを超えたこと、若者の比率が高い国家で現在8600万人の人口がすぐ 1億人になるであろうことを予測すると非常にポテンシャルの高い市場と言えます。私の取引先は日本製の著名ブランドのベビー用品をコンテナ単位で輸出を始めています。
 もうひとつは外務省の統計で重要なパートナー国として一番に日本をあげたのはアセアン諸国では現在も今後もベトナムとインドネシアだけです。フィリピンは現在は米国、次に日本の順ですが、今後については米国が大幅に減ったため日本がトップになりました。タイはますます中国依存が強くなる傾向にあります。
 会場で先日私の講演に参加してくれたベトナム人男性と会いました。彼はハノイ市の出身だそうで有名大学が集中するハノイですので「大学はどちらへ行かれましたか?」と聞くと「東京農業大学です。」と答えられ思わず笑ってしまいました。日本語をマスターするまでは英語で授業を受けていたそうです。新婚さんで奥さんは留学仲間、夫婦そろって日本企業で働いています。ちなみにアジアでの女性の社会進出率はベトナムがだんとつトップで男性 100人に対し女性94人。女性の企業経営者は珍しくありませんが、政府機関は女性の管理職が少ない気がします。軍~共産党~政府という伝統的に男性優位の特権階級に優秀な男性が集中するからかも知れません。
河口容子
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[347]世界に拡がる通販の世界

先日新聞記事を見て通販での売上がコンビニや百貨店の売上を超えたことを知りました。約20年前、会社員の頃日本の大手通販会社数社と取引をしていたことがありますが、当時は通販という形式での売上がなかなか伸びず、日本は人口ひとり当たりの小売店数が欧米の何倍もあり、買い物に不便しないこと、ショッピングに出かけることが楽しみのひとつであるから小売店を肩を並べるような事はないだろうと言われていました。
ここまでふえたのは媒体の進化、カタログ誌や新聞からネットへの変化があげられるでしょう。ネットになれば違う通販会社の商品を簡単に比較することもできますし、検索もかけられます。欲しいものをとことん探せるとなればお買いもの好きにはたまりません。私も日常食べるものや洋服の一部を除き、家電、PC、家具までほとんどネット通販に頼っています。最近は運送面でもスピード・アップし注文した翌日届けてくれるものもあり、「忙しくて買い物に行く時間がない」という悩みもなくなりました。
ネット通販のおもしろさは有名デパートから個人のやっているような小規模のお店までが競い合っていることです。進物物や限定の化粧品などは外商のカードを利用してデパートのネット通販を使いますし、小さなお店ではユニークな商品が超破格値で買えたりします。効率化のため小売店の品揃えが最大公約数的になっていく中、通販では標準サイズでないもの、売り場で埋もれてしまうようなニッチな商品も多くの選択肢を持っています。女性にとって嬉しいのは実年齢よりはるかに若い層をターゲットとしたファッション・アイテムを何の気兼ねもなく買えることです。また、スーパーやドラッグストアでは売っていない外国製の洗剤や柔軟剤をまとめて買いましたが、5kg くらいあり自宅まで配達してもらえるのは何とありがたいことか。
最近は海外在住の日本人の方がセレクトショップ的にネット通販をされているのを見かけます。専門的な仕入れルートを持たずとも商品選択眼さえあれば小売店で調達しても可能なのでサイドビジネスとしては面白いのではないかと感じました。
韓国製の化粧品をいくつかまとめて買ってみたのですが、国内に連絡と決済を行う韓国人経営の会社があり、商品そのものは韓国から送られてきました。注文後3日くらいで到着ですから国内とくらべて何ら遜色はありません。また梱包も素晴らしく美しく、日本人のほうが几帳面で手先が器用だから梱包もきれい、などというのは単なる神話に過ぎないとあらためて思いました。
もともと外国のネット通販を利用して個人輸入を楽しむ方法はありましたが、逆に海外へネット通販を利用して積極的に売って行く時代に変わりつつあります。中国でもネット通販がさかんになって来ました。世界最大の市場中国で自社の製品を売ってみたいという日本の中小企業にとってもビジネス・チャンスの到来です。
河口容子