[347]世界に拡がる通販の世界

先日新聞記事を見て通販での売上がコンビニや百貨店の売上を超えたことを知りました。約20年前、会社員の頃日本の大手通販会社数社と取引をしていたことがありますが、当時は通販という形式での売上がなかなか伸びず、日本は人口ひとり当たりの小売店数が欧米の何倍もあり、買い物に不便しないこと、ショッピングに出かけることが楽しみのひとつであるから小売店を肩を並べるような事はないだろうと言われていました。
ここまでふえたのは媒体の進化、カタログ誌や新聞からネットへの変化があげられるでしょう。ネットになれば違う通販会社の商品を簡単に比較することもできますし、検索もかけられます。欲しいものをとことん探せるとなればお買いもの好きにはたまりません。私も日常食べるものや洋服の一部を除き、家電、PC、家具までほとんどネット通販に頼っています。最近は運送面でもスピード・アップし注文した翌日届けてくれるものもあり、「忙しくて買い物に行く時間がない」という悩みもなくなりました。
ネット通販のおもしろさは有名デパートから個人のやっているような小規模のお店までが競い合っていることです。進物物や限定の化粧品などは外商のカードを利用してデパートのネット通販を使いますし、小さなお店ではユニークな商品が超破格値で買えたりします。効率化のため小売店の品揃えが最大公約数的になっていく中、通販では標準サイズでないもの、売り場で埋もれてしまうようなニッチな商品も多くの選択肢を持っています。女性にとって嬉しいのは実年齢よりはるかに若い層をターゲットとしたファッション・アイテムを何の気兼ねもなく買えることです。また、スーパーやドラッグストアでは売っていない外国製の洗剤や柔軟剤をまとめて買いましたが、5kg くらいあり自宅まで配達してもらえるのは何とありがたいことか。
最近は海外在住の日本人の方がセレクトショップ的にネット通販をされているのを見かけます。専門的な仕入れルートを持たずとも商品選択眼さえあれば小売店で調達しても可能なのでサイドビジネスとしては面白いのではないかと感じました。
韓国製の化粧品をいくつかまとめて買ってみたのですが、国内に連絡と決済を行う韓国人経営の会社があり、商品そのものは韓国から送られてきました。注文後3日くらいで到着ですから国内とくらべて何ら遜色はありません。また梱包も素晴らしく美しく、日本人のほうが几帳面で手先が器用だから梱包もきれい、などというのは単なる神話に過ぎないとあらためて思いました。
もともと外国のネット通販を利用して個人輸入を楽しむ方法はありましたが、逆に海外へネット通販を利用して積極的に売って行く時代に変わりつつあります。中国でもネット通販がさかんになって来ました。世界最大の市場中国で自社の製品を売ってみたいという日本の中小企業にとってもビジネス・チャンスの到来です。
河口容子

[336]桜に寄せて

 今年の東京の桜は開花宣言直後に寒気が居座り、満開までじれったいほど。こんなに長く桜を見ることができたのはここ何年かの間では記録的ではないかと思います。私の自宅は玉川上水跡の桜並木や善福寺公園にも近く、またご近所には庭内桜の古木から桜の花が滝のようにあふれ出ているお宅など、常に桜に囲まれた暮らしです。
 親子三代、 100歳近い方が車椅子で、お茶会の帰りなのか和服姿の女性たちと心なごむお花見風景があちこちで見られました。不況下での「安近短」なのかも知れませんが、自然とのふれあいが戻って来たのなら不況も悪いことばかりではないと思いました。
 2009年 3月26日号「サクラ」で触れた香港の D氏に桜の写真を何枚か送りました。「本当にグッド・タイミングです。 L先生ご夫婦に刺身をごちそうになって帰ったところなんです。あなたのおかげで素敵な 1日になりました。」と返事が来ました。お花見をしながら刺身でも食べた気分になったのでしょう。実はビジネス・パートナーの L氏の夫人が香港の高校で英語を教えていた時の教え子が D氏夫人というつながりです。
 日本のクライアントの女性社員からは桜に寄せて日頃の感謝とお礼をというはがきをいただきました。イタリア留学経験のある彼女ならではの小粋さかも知れません。お礼にオフィスの窓から見える桜の写真をお送りしたところ、さっそくPCの壁紙にしてくださったようです。「ふと手を休める時や考え事をする時に無意識の視線の先にこの自然があるとは何とぜいたくな。」と彼女。
 2009年 3月 5日号「春の別れ」で触れたベトナム大使館の S商務官の送別会を取引先と一緒に都内の日本庭園で行いました。夜桜を日本の思い出として持って帰ってほしかったからです。連休明けに帰国する S商務官は引き継ぎ、引っ越しの支度と忙しい中、休日には日本の春を惜しむかのように家族連れであちこち出かけているようです。
 この日驚いたのは S商務官の日本語力です。取引先の方に英語を話さない年配の男性がおられ、目上の人を大事にするベトナム人らしく、また私たちと親しいということもあってか、日本語でハノイの桜まつりの説明までしてくれました。今まで英語でしか話したことがなかったので損をした気分です。英語と仏語の得意な S商務官は日本に赴任後スクールに通ったそうですが、日本留学経験のある夫人に上のお子さんが幼稚園に通っていれば上達するのも当然。
 「このローストビーフおいしいですね。どこの肉だろう?」と取引先の I氏。すかさず「サガギュ(佐賀牛)」と S商務官。「参りました。」と日本人全員。
 「北朝鮮のミサイルはこわかった?」と S商務官が私に聞くので「いいえ。」「どうして?」「だって逃げる暇もないじゃありませんか。」取引先の T氏は「ベトナムって北朝鮮とは仲がいいんですか?社会主義国だから交流がありますよね。」「はい、ベトナム戦争の時は北朝鮮が支援してくれましたから友好国です。」「ベトナムって米国も中国もロシアも仲がいいんですよね。そういう国に北朝鮮問題を手伝ってもらえばいいのに。」と T氏。
 「商務参事官は 2度目の日本ですから Sさんもきっとまた日本に赴任されますよね。それまで私たち長生きして待ちましょう。」と私。取引先の方々は皆私より年上、一方、 S商務官は30代。一気に明るい笑顔が広がりました。眼下にはライトアップされた大きな夜桜。「ロマンティックですね。ここへは初めてです。本当にきれい。子どもたちは日本で生まれたのでベトナムに慣れるまで大変です。」
 春は桜、桜は春。今年もいろいろな思い出を作ってくれました。
河口容子
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