春休みで海外旅行に行かれる方や年度の変わり目を迎え海外出張も多い時期だと思います。2004年 4月15日号で「旅の安全」について書かせていただきましたが、今回は私が特に気をつけていること、同行者にアドバイスしている事をまとめてみます。
持病のある人はもちろんのこと、薬は飲み慣れたものを持って行くことです。薬が手に入っても途上国では不安な場合もありますし、欧米では体格が違うために小柄な日本人が風邪薬を飲むと効きすぎて眠くなることといった例があります。私自身は東南アジアに行く際は消毒薬、抗菌目薬も必ず持っています。また、初めて行く国の場合、水が合わないと嘔吐と下痢を繰り返しことがあるので脱水症状を防ぐために日本のスポーツ飲料やお茶などのペットボトルを持って行くこともあります。
衣服や下着は余分に持って行くこと。汚してしまったり、ほころびてしまったり、あるいはスケジュール通りに帰れないこともあるからです。これは女性特有の問題かも知れませんが、日本と気候が異なる所へ出かける場合、用意した衣服が現地の気候風土にマッチしないということがあります。現地で買うのも楽しみですが、似合うもの、フィットするサイズがあるとは限らず、特に出張の場合はいろいろなシチュエーションを考えて余分に準備することにしています。
途上国に行かれる場合、ショート・パンツに素足、サンダル履きはやめた方が良いかも知れません。舗装したきれいな道路ばかりとは限りませんので足を怪我して破傷風になる危険性もありますし、中国やベトナムでは狂犬病も多く、脚にかみつかれ現地で病院へ収容された人もいます。
現地で貴重品をホテルのセーフティ・ボックスにしまう方も多いようですが、私はパスポートや航空券も含め途上国では常時持ち歩いています。テロや暴動に遭遇した場合出先からそのまま空港へ行き帰国できる体勢にしているのです。
ホテルの部屋は乱雑にしないこと。私はワードローブには必要以上の衣服は入れませんし、外出時はスーツケースにロックをし、スリッパなどもそろえて脱いでおきます。洗面道具や化粧品などもポーチにしまい、きちんと置いておきます。おかげで何もなくなった事はありませんし、疲れてホテルの部屋に戻った時にも気分が良いものです。
航空機の中は世界中から乗客がウイルスを持ち込むので汚いと聞いたことがあります。機内で眠る時はマスクをしています。のどを痛めることもありません。また、帰国後洗えるものはすべて洗濯し、洗濯できないものは除菌スプレーをして天日干しをしてからしまいます。
上記のような事を言うと「案外神経質なんですね。」とびっくりされたりもしますが、備えあれば憂いなし。楽しい旅は余裕から生まれます。そして多少困難なことがあっても落ちついて対処すること、最後まで気を抜かない事です。
河口容子
[167]「ノー」から生まれたプレゼント
2003年 8月 7日号で「ノーは親切、論争は親近感」というのを書かせていただきました。日本人は「ノー」と言うのも「論争」も不得意です。ましてやそれが、親切であったり、相手に親近感を覚えてもらうわけがない、と思われた方もあるでしょう。ところが、その通りの出来事がクリスマスを目前にした日におこったのです。
私のオフィスに英語で電話がかかって来ました。相手は2005年11月10日号「ローレンスと呼んで」のローレンス、シンガポールのコンサルタント会社の CEOです。実は 2ケ月ほど前に彼からある業界の役員クラスの方を聞き取り調査をしてまわる仕事の依頼を受けました。期間は英文レポートも含め「明日から 1週間」で10社ほどありました。報酬はびっくりするほど安く(パートタイマーのリサーチャーなら喜んで引き受けたかも知れませんが、プロに依頼する仕事としてはあきれた金額でした。)私はその期間は予定がすでにぎっしりでしたので即お断りしました。断らないと先方も次のアクションを起せないからです。
ついでに私のおせっかい心が活躍し始め「日本の企業で役員クラスの方が見ず知らずのインタビュアーに即応じてくれることはまずありません。10社のうち何社かは断られるでしょうが、まずアポを取るだけで大変です。それにその企業はどこにあるのですか?」と東京から大阪や名古屋までの交通費の金額を明示し、「出張する場合は交通費を出さないとその報酬では無理です。」などと、その他気付いたことをいくつか指摘しました。たぶんこの条件を提示されたプロのコンサルタントは「馬鹿にして」と腹がたったことでしょうが、単に知らないだけかも知れない、それなら教えてあげよう、というのが私のねらいでした。
日本なら「こうるさいおばさん、余計なお世話」と思われて終わりですが、外国人は違うのです。そして上記の電話につながるのですが、彼いわく「内容についてはあなたのご指摘のとおりでした。それにしてもひどいもので依頼した日本人で返事をくれたのはあなただけでした。」仕事の依頼をするくらいなら、まったく知らない人には頼まないはずですが、皆うんともすんとも連絡をしないなんて日本ビジネスマンの恥です。即「ノー」と言ったことと、気付いたことを述べたことにより彼は私の事を信頼できる人間と思ったらしく、もっと条件の良い仕事を 2件くれました。
メールで送られてきた契約書を読むと仕事相手の条件は「政府機関の仕事に携わり評価されている人、もしくはビジネスのエキスパート、もしくは企業経営者、もしくは大学などで教えている人」とあります。もしくは、ではなくてかろうじて全部私にあてはまるではないですか、すごい、と気分を良くしてサインをしたページをとりあえず FAXしたところ、山のような書類が送られて来ました。
「書類をたくさんありがとうございます。ゴージャスなクリスマス・プレゼントにめまいがします。」とメールをしたところ「プレゼントを気にいってくれるといいのですが。ジェントルマンらしいプレゼントを贈れなくてごめんなさい。」と矢のように返事がかえってきました。香港のパートナーたちともそうですが、海を隔てて一緒に仕事をする場合、ちょっとした一言で親近感や連帯感が生まれるものです。
河口容子