[112a]見世物小屋

近所の神社で縁日があると見世物小屋が出ることがあった。毎回ではない。また興行業者がそういくつもあるわけではないので、隣町の神社で出たものと同じだったりする。30年以上も前の話。

見世物小屋の歴史は古いが、今はほとんど見ることができない。身体障害者を見世物にする背景が批判され衰退することになるが、今のように社会福祉が発達していなかった頃は、身体障害者の最後の生活手段だったことを考えると、その根も深い。

見世物小屋の出し物は、ヘビ女、牛女、火噴き女など。ヘビ女とはヘビを食いちぎったりヘビを鼻の穴に入れ片方の鼻の穴から出したりする芸である。

火噴き女はろうそくの蝋を口中にたらし、それをろうそくに噴きつけ火炎を発生するもの。今ではヘビメタ系のロックコンサートでよく見る光景。これは火噴き女のパクリか。ヘビ女と火噴き女は同じ人がやっているとも聞く。牛女は身体障害者だ。身体は牛で頭は人間というふれこみだが身体が牛なわけが無い。要するに肢体不全の身体障害者なのである。

おどろおどろしい看板と口上が独特の雰囲気をかもす。お代は後払いがおきまり。綿菓子やヨーヨーなど露天めぐりの最中、横目で見ているも中々入る勇気がわかない見世物小屋である。そういえばつい最近、見世物小屋のヒロイン「牛女」さんは亡くなられたとか。果たして彼女は幸せだったのだろうか。遺伝子操作の技術が新たな牛女を生まないことを願ってやまない。