[250]年休の理由と時季変更権
年休はその取得にあたっては理由を問わないこととなっています。
判例:「年次休暇の利用目的は労基法の関知しないところであり、休暇をどのように利用するかは、使用者の干渉を許さない労働者の自由である、とするのが法の趣旨である」(S48・3・2最高裁第二小法廷判決)
しかし、年休の申請用紙には理由欄があるのが普通。理由欄があるため正直な労働者はそこに理由を書いてしまうでしょう。そしてそれを見た不勉強な上司はその年休を却下するかもしれません。
年休は請求されたらとらせるしかなく、年休取得の理由については上記判例のように問うことはできません。しかし、全く理由を聞いてはいけないのか、というとそうでもないのです。
それは、時季変更権の行使をする際に、理由を問うことで、誰に時季変更権を行使するかを決めることができるからです。
たとえば、従業員が10人いる職場でそのうち8人が同時に年休を請求したとします。残り二人では正常な業務はできません。悩んだ上司は、時季変更権を行使して、正常な業務を遂行しなければならないこととなります。
この場合、それぞれの年休請求者に対して、理由を聞き、その緊急性に応じて時季変更権を行使することは合理性があり、認められる範疇として容認されます。つまり葬儀や結婚式などは時季をずらすことが難しいので年休を認め、代替できる行事を理由とする場合には時季変更権を行使する、というようなこともありえるのです。
しかし実際問題として、会社が時季変更権を行使することは非常に難しいことです。たとえ10人中8人が年休を請求したとしても、その時期までに日数的に余裕がある場合は人員を手配するなどの努力をしなければならず、時季変更権は認められません。時季変更権が認められるのは、日数的に余裕がない場合に限られます。
とすれば、時季変更権が認められるのは、10人中8人たとえば前日に一斉に年休を請求するなどのケースになりますが、そもそもそのような事態は異常であり、問題山済みの職場であるとしかいいようがありません。
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