[160]読者Q&A『残業時間の切捨て』

■読者からの質問

はじめまして。HPを見てメールしています。○○と申します。

私は、現在、一部上場企業で働いています。一つ疑問に感じた事があります。
現在働いている企業では、毎日1時間以上30分単位でしか、残業が認められていません。
私の業務は、1時間以上の残業を要する事もありますが、毎日、定時後15分?40分程度の残業です。これは今まで全て切り捨てられてきました。

会社の規則では、「1時間以上30分単位」と記載されているので仕方がないと納得いかないまま諦めていましたが、「何分以上何分単位で残業と認める」という様な事は労働法に明記されているのでしょうか?

企業側は、「労働法に記載がないから、労働法違反ではない」と主張しています。
もし、ご存じでしたら教えてください。宜しく御願い致します。

■たまごやの回答

『残業時間の切捨て』

お便りありがとうございます。例によってアバウトに答えさせていただきます。
行動を起こす時には関係省庁の窓口にてご確認ください。

お尋ねの件ですが、労働基準法でいう残業とは一日の労働時間8時間を越えた部分をいいます。したがって一日の契約時間が仮に5時間の場合、1時間残業して6時間働いても労働基準法でいう割増賃金対象の残業には該当しません。そのあたりまず確認してください。

また変形労働時間制を採用している場合はトータルで残業時間を考えますので以下はあてはまりませんので注意してください。

一般的な労働形態で一日あたり8時間の労働時間として話を進めます。

一日の実労働時間が8時間の場合、それを超えて残業した場合は、超えた部分につき25%増しの割増賃金を支払わなければなりません。これは就業規則等にそういう記述があっても無くても支払う必要があります。

会社の規則に「1時間以上30分単位」と記載されている、とのことですが、にわかには信じられませんが、本当にこの記述があるならば、コピーをとって労働基準監督署に持っていってみてもらうといいかもしれません。もちろんこのような規則は無効です。8時間を1時間30分超えて残業したならば、会社は1時間30分に対して割増賃金を支払わなければなりません。

時間の切捨てについてですが、時間計算上15分単位あるいは30分単位で計算するということは慣例上認められています。しかしそれは計算上の便宜を図るためであり、明らかに労働者の不利になるようなことは認められません。

例えば30分単位の計算方法の場合、故意に29分で上がらせて残業を付けなくするなど。このような作為的なサービス残業は過去の判例でも支払命令が出たように思います。

労働基準法第37条
(時間外、休日及び深夜の割増賃金)
使用者が、第33条又は前条の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の2割5分以上5割以下の範囲内でそれぞれ命令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。

ただし労働基準法には第41条のように除外規定があります。「土地の耕作若しくは開墾の事業」「動物の飼育又は水産動植物の採捕若しくは養殖の事業その他の畜産、養蚕又は水産の事業」つまり農業や漁業のことをいっているわけです。これらの業務に従事する労働者については労働基準法の労働時間、休憩、休日の規定の適用が除外されます。

いずれにしても、一部上場企業とはいえ労働環境は貧弱である場合が多いので就業規則を持って労働基準監督署に相談されることをお薦めします。

2004/05/26(原文)
2006/06/27(加筆修正)