[223]労働審判制度

職場における労働に関する諸問題が次々と起こっています。これには原因が二つあると思います。

まず、経営者の無知。中小企業の経営者というのは、商売には熱心ですが、人を雇用したときに義務となる労働法を理解していない場合が多いのです。雇用のことは知らなくても会社は設立できますし、社長になれるのですから。

自分一人で商売しているときはいいでしょう。24時間寝ずに働いたって誰も文句を言いませんし、誰に迷惑をかけることもありません。

しかしひとたび人を雇ったら、その人を24時間働かせることは無理です。労働者は経営者と同じようには働けないのです。しかし、経営者は自分がやってきたことと同じことを労働者に課そうとします。これが問題の根源です。

次に起こる問題は、労働法を知っていながら、労働者に対して違法な行為を働くことです。いわゆる確信犯。労働者に過酷な労働を強いることによる利益とリスクと天秤にかけ、利益があるほうをとるのです。

たとえば、サービス残業を意図的にさせる。そのことにより得られる利益、法的に罰則を受けることを天秤にかけ、利益のあるほうを取るのです。罰則・罰金が軽ければ、あえて罰を選ぶこともある、これが経営者というものです。

こういった無知による被害、そして確信犯的経営者から労働者を守るための制度ができました。労働審判法です。これは平成16年5月12日に公布され、平成18年4月から実施されています。

この制度のおかげで、労働者は公に自分お立場を公表し、社会による審判を受けることができるようになりました、今まで泣き寝入りするしかなかった、職場の問題に公のメスが入るようになったことは大きな前進といえるものです。

この制度は、経営者の目を覚まさせるには大きく貢献すると思いますが、では職場問題が減少するかといえば、そうはいえません。

なぜなら経営者の無知は今までどおりだからです。つまり社長を教育しなければ問題は解決しないのです。会社を設立する場合は、つまり法人として活動するには、たとえば2年間研修を受けなければ許可しない、というのはどうでしょう?

人を雇わないならば、今でも個人事業主という法的な立場が選べますので、それを通過地点とし、個人事業主の間に研修を受けて試験に合格したものだけが法人設立ができる、などとするのはいかが?

今までの高度成長時代は、知識が無くてもバイタリティで社長が務まった時代です。その無知な連中が、現代の職場問題の基礎を形成していることを強く認識すべきでしょう。

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