[139]労災保険の特別加入

労働基準法第75条では『労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかつた場合においては、使用者は、その費用で必要な療養を行い、又は必要な療養の費用を負担しなければならない』とあります。

また76条では『労働者が前条の規定による療養のため、労働することができないために賃金を受けない場合においては、使用者は、労働者の療養中平均賃金の100分の60の休業補償を行わなければならない』と休業補償まで定めています。

会社の経営が順調で資金が潤沢にあれば、そのような保障も可能でしょう。ところが現実には厳しいものがあります。特に大きな災害事故で負傷者が多数出た場合は保障額は膨大なものになってしまいます。そこで登場するのが労働者災害補償保険(労災保険)です。

労災保険は国が運営しており、費用は会社が全額負担します。一人でも従業員(正社員、パートタイマー、アルバイトを問わず)を雇えば労災には強制的に加入しなければなりません。労働者がいるのに労災に入っていない会社というのはまずありえません。

労災は労働者のための保険ですから、事業主や一人親方など自営業者は加入できません。しかし事業主とはいえ労働するわけでその最中に怪我をすることだってあります。業務の実情、災害の発生状況など考え、労働者に準じて保護する必要があるということで、特別に労災保険への任意加入を認めています。それが特別加入制度です。言ってみれば労災の「任意保険」です

●中小事業主等(第1種特別加入者)

1.中小企業の事業主であること

  • 金融、保険、不動産、小売、サービス業の場合・・・・・労働者数が常時 50人以下
  • 卸売業の場合・・・・・労働者数が常時100人以下
  • その他の事業主の場合・・・・・労働者数が常時300人以下

2.労働保険事務組合に事務処理を委託する事業主であること。

上記の2つ条件を同時に満たすことにより特別加入ができます。

●一人親方その他の自営業者(第2種特別加入者)

一人親方その他の自営業者に該当する人は、ほかに労働者を使用しないで仕事をする人で下記の事業を行なう人です。

  • 自動車を使用して行う旅客又は貨物運送の事業、個人タクシー、個人貨物運送業者等
  • 大工、左官、とび等の建設業
  • 漁船による漁業(産動植物の採捕)
  • 林業
  • 医薬品の配置販売業いわゆる「薬売り」
  • 再生利用の目的となる廃棄物等の収集、運搬、選別、解体等の事業

●海外派遣者(第3種特別加入者)

労災保険は日本国内のみに適用されるものなので、海外派遣者への適用がありませんでした。しかし特別加入すれば適用になります。

特別加入の対象となる海外派遣者とは、

  • 国際協力事業団等、技術協力を行なう団体から派遣されている人
  • 日本国内の会社から海外において行なわれる事業に派遣されている人

なお、日本国内で働いている人が海外出張で災害にあったときは、特別加入していなくても国内出張に準じた保障が受けられます。