[173]年休の事後承認

事後の年休は承認しなくていい、と前回述べたところたくさんのお便りをいただきました。少し確認をしてみたいと思います。

年次有給休暇の取得時期について述べている労働基準法の規定は以下の部分です。

(年次有給休暇) 労基法第39条 4項
使用者は、前3項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。

この条文が言っている事は、年休は労働者が請求したらいつ何時でも与えなければなないとするものです。この部分だけ見れば、事前事後にかかわらず年休を取れるように見えます。

しかしその後に「事業の正常な運営を妨げる場合においては」という時季変更権を行使するための判断する猶予期間を必要とする記述があるのです。時季を変更するかしないかの判断をする時間が必要ということは、請求は「事前」でなければならないのです。

従って、事後の年休は認めなくてよい、というのが労基法の考え方です。事後の年休を認めない理由は、事後の年休を認めた場合の弊害を考えると分かり易いと思います。

たとえば、寝坊をして遅刻をしそうになった、とします。遅刻は評価に影響を与えます。それはまずいので、いっそのこと休んでしまえ。そして翌日、適当な理由をつけて「事後の年休」を請求する、というようなことが可能になります。

これが可能とするならば、過去の欠勤を全て年休で補完するということも可能になってしまいます。精勤賞、皆勤賞を狙うこともできてしまいます。次第にその制度を悪用する輩も現れ、収拾がつかなくなり、ひいては人事考課の基盤が揺るいでしまうという危惧があるのです。

年休は事前に計画的に、周囲の了解を得て円満に取りましょう、というのが労基法の趣旨といえるのではないでしょうか。

しかし、それでは困るという人や、事後年休を認めさせるにはどうしたらよいかということですが、これは就業規則に年休の取得時期について定めればいいのです。「やむをえない事情により欠勤した場合は、この日に年休を充てることができる」等の記述を加える・・・交渉しましょう。

[172]読者Q&A『事後の有休』

■読者からの質問

突然の質問で恐縮ですが、他に聞く方もなくメールしました。病気で3日、休んで出社したところ、社長から「有給扱いにはしない、給料から引くから当然でしょう!」と強く言われました。

理由 1.社長が仕事の事を聞きたかった時、私は休んでいた(最大の理由)
理由 2.他の人より突然の休みが多い。

有給は病気したときに使うように普段休まないようにしていたが間違いなのでしょうか。更年期に差し掛かり自分では自己管理していても限度があり無理して出社してはいますが、突然の休みになります(病気は予告してこないし)

3月16日から翌年の3月15日まで1年(有給日20取得)で8日が突然の休み(病気)多いのでしょうか?
早めに有給表を提出していても理由1で過去にその月の残業代が支払われ無かった事もあります。

ご回答、宜しくお願いします

■たまごやの回答

お便りありがとうございます。例によってアバウトに答えさせていただきます。
行動を起こす時には関係省庁の窓口にてご確認ください。

年次有給休暇を病欠に充てた場合の処理についての質問です。

まず大きな勘違いとして、年休は病欠に充てるものではないという事を知ってください。年休は労働の義務が生じている日に対して、その労働を減収無く免除するものです。その日はゆっくり休んでリフレッシュしてくださいというのが趣旨です。病欠に充ててはもったいないのです。

しかし現実には突発的な病気に対して、年休を使いたいというのが実情でしょう。そして多くの会社は、病欠の場合は事後の年休を認めています。しかしそれは会社の好意によるものなのです。本来ならば、事後の年休を認める義務は会社にはありません。時季変更権を行使して、年休は他の日に移動し、病欠した日は欠勤扱いにできるのです。

年休は労働者にもともと存在する強い権利ですから、使用者は年休の請求に対して却下することはできません。しかし、使用者には時季変更権が認められています。年休を行使する場合、使用者は時季変更権を行使するかどうかを事前に吟味する必要があります。

ということは、年休の請求は、事前で無ければならないということです。通常は、前日の夕方までに請求すべきというのが慣習だと思います。従ってこの場合は、年休の事前吟味ができないことを理由に病欠の日を欠勤扱いにすることは違法ではないといわざるを得ません。特に理由1については会社の言い分は正当性があります。

しかし、その場合は時季変更権を行使するわけですから、代わりの日に年休を取らせる義務が生じていますので、代わりの日を指定してもらえばいいと思います。それを拒否したら、今度こそは違法行為となりますので、労働監督署に相談しうる事件となります。

2005/02/14(原文)
2006/06/27(加筆)
関連リンク:
事後の年休

[171]高齢者等の雇用促進

企業はなるべくなら高齢者は雇用したくないのが本音。そこで行政はこれを推進するため、積極高齢者雇用のための助成金や給付金を用意しています。高齢者を積極的に雇用すれば経済・社会は活性化します。大いに利用しましょう。

◆継続雇用定着促進助成金

65歳以上の定年、継続雇用制度を定めた事業主を支援するもの。この助成金は、継続雇用制度の導入と定着を目的とした継続雇用制度奨励金(第I種)、高年齢者の多数雇用を目的とした多数継続雇用助成金(第Ⅱ種)、多数継続雇用助成金(第Ⅱ種) の3つの制度からなっています。支給対象事業主には最高1500万円が支給されます。

◆特定求職者雇用開発助成金

就職が特に困難な方を対象に、公共職業安定所等の定める項目に同意した職業紹介事業者の紹介により、継続して雇用する場合に賃金の一部として支給される助成金です。

60歳以上の者・身体障害者・知的障害者・精神障害者・母子家庭の母等・中国残留邦人等永住帰国者・北朝鮮帰国被害者等などが「就職が特に困難な方」に該当します。支給される額は、企業規模や区分に応じて、採用後1年間又は1年6か月間に支払われた賃金に相当する額の1/4~1/2です。

◆高年齢者等共同就業機会創出助成金

45歳以上の高年齢者等が職業経験を生かし、3人以上で共同して事業を創設し、継続的な就業機会を創出した場合、事業開始に要した経費のうち一定範囲の費用合計額の2/3を500万円を限度として支給するもの。

◆緊急雇用創出特別奨励金

雇用情勢が悪化した地域に所在する事業主で、解雇、倒産等により離職した中高年齢者等を公共職業安定所又は民間の職業紹介事業者の紹介により継続して雇用する労働者として雇い入れた事業主に対し、奨励金を支給するものです。雇用情勢が悪化したときに発動される制度で、いつでもあるわけではありません。

詳細については、最寄のハローワーク、(財)高年齢者雇用開発協会、都道府県高年齢者雇用開発協会等にお尋ねください。

2005/01/23

[170]高年齢者雇用安定法

平成10年に制定された「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(以下高年齢者雇用安定法)」によって、現在では60歳を下回る定年は違法行為となります。また高年齢者雇用安定法は事業主に、定年を延長したり定年者を再雇用したりして、積極的な高齢者雇用を求めています。

現在では努力義務ですが、現代人は60歳ではまだまだ就業意欲があり、年金の財源不足も手伝って、いずれは65歳定年が当たり前、もしくは60歳で全員再雇用が義務となるに違いありません。好むと好まざるとに関わらず、企業は高齢者雇用に取り組んでいかなくてはならないのです。

方法は色々あります。

◇定年を65歳にする方法

現在60歳の定年を65歳までにする方法です。しかし60歳の社員ともなれば、相当な給与を得ているでしょう。この方法はその給与を引き続き支払うことになり、権力のある会社に居座り続ける老獪社員になりかねません、給与財源を圧迫し、かつ若手社員の育成に問題を残す方法です。

◇60歳定年で一旦退職、65歳まで再雇用する方法

60歳で一旦退職扱いとし、その後継続して再雇用する方法です。退職金も払い、役職を外し後進の育成を重点に行なってもらう方法です。パートタイマー並みの時給、定時上がり、で働いてもらうことで「今までと違う仕事」という本人の意識の改革があり、好結果を生むことが多いです。

一般的には、労働者の高齢化による業務効率の低下や、年功序列による高賃金の負担から逃れるため、後者の方法が一般的になると思われます。

[169]65歳定年

労働者が定年に達すると自動的に雇用関係が終了する制度が定年制です。会社が定年制を導入するには、定年に関しての事項を就業規則に明記し、かつその定年制が慣行的に実施されていなければなりません。就業規則に定年規定があり、従来からの慣行として行なわれている場合には、定年をもって雇用関係が自動終了します。この場合は「定年退職」となります。

ところが、昨今定年が過ぎても継続して雇用されている場合が多く見られるようになって来ました。定年後も引き続き雇用が継続されることが慣行的に行なわれている職場では、労働者が定年後も引き続き雇用されるという期待感を持ってしまうため、そのような場合は定年時に使用者側で「定年解雇」の手続きをします。使用者側で定年解雇の手続きを取らずにいると、そのまま継続して雇用されようとする労働者に対して不当解雇される場合もありますので注意が必要です。

さて、定年といいますと現在は60歳が普通でしょう。定年に関しては「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」という法律があり、これによって現在では60歳以下の定年は違法になります(第8条)。またこの法律は平成12年10月1日以降の改正で定年を65歳とするよう努力義務を課しています(第9条)。

これは昨今の高齢化社会を考慮し背景に、60歳以上になっても同じように働きたいという労働者が多いこと、また年金の財源確保が難しくなっており、年金の給付開始を65歳以上からにしたいことなど、政治的な思惑もあるようです。いずれにしても企業としては60歳定年に達した社員を65歳まで継続的に雇用するよう、積極的に努力していくことが求められていくでしょう。

定年退職者の再雇用については就業規則に規定することが必要です。定年後の再雇用はそれまでの高賃金を一旦精算する意味もあることから、どのような基準で再雇用されるかが重要な問題となるからです。

一般的には、定年後再雇用される場合は嘱託(しょくたく)社員とする場合が多いです。仕事の内容はほとんど変わらないことが多く、たとえ退職金を受け取っていても、勤続年数等は通算されるのが普通です。従って、年次有給休暇などの算定も新規と異なり、一定期間置いた後の再雇用以外は、勤続年数を通算した上で休暇日数を算定することが必要です。