[09]白木屋の火事

2019年4月27日

第9回
■白木屋の火事
その頃の日本橋界隈には日本銀行やデパートでは三越、高島屋、白木屋が軒を並べるように建っていました。三越の玄関にライオンの像はその頃にもありました。高島屋と白木屋は並んでいましたが特に白木屋の「お化け屋敷」は母に連れられてよく行きましたが、臆病の私は怖くて入れませんで、入り口で何時も待たされましたが、妹は平気で入って行きました。入り口近くには古井戸があって、のぞくと下の方に女の人が髪を振り乱して縄で縛られてぐるぐる回っている人形が見えました。
その頃、昭和の白木屋の大火災がありました。この火事は昭和七年十二月十六日に起きました。これは大変に大きな火事でした。野次馬根性もあってか、まだ小さかったのですが、母親に引きずられるように飛んで見に行きました。消防車が何台も来ていましたが、何しろ八階建てのビルです。四階のクリスマスツリーの豆電球のスパークから引火したらしいのです。
当時のオモチャは殆どがセルロイド製であったために火がついたら手の施しようがなかったようです。八階の窓と云う窓に助けを求める女店員の人が叫んでいたようです。でも野次馬は大勢いても手の付けようがなかったという現状でした。
当時の女店員さんは全部和服であったために、消防車のハシゴ車にも乗れなかったようです。なにしろ梯子車は3台しかなく八階に逃げた女店員はローブで降りようとしていましたが、着物の裾が気になって片手は着物の裾を押さえようとしたために13人が墜落死してしまったのです。何故なら和服の裾が風でパラシュートのように広がるので、沢山の野次馬の前では恥ずかしくて降りることが出来なかったようです。それでむざむざと死んだ人も多かったようです。
それが契機で女店員さんの服装も変わったと伝えられています。此の災害があったために翌年の朝日新聞の社説に「日本婦人は下履きを着用しろ」と出たくらいです。