[51]ビクター全指向型球形スピーカー

2017年1月3日

1970年頃のジャズ喫茶といえば、店内オーディオに趣向を凝らし、また店の看板として高額品が多くあったので、ジャズそのものもさることながら、その機器目的で聞きに行くという行動があったと思います。私は新宿の「ママ」などはよく行きましたが、ジャズよりもアルテックのセクトラルホーンの音を聞きに行ったといっても過言ではありません。

その当時のジャズ喫茶はこのように機器にこだわりがありましたが、普通の喫茶店でも結構まともなオーディオ機器を揃えていたのは、やはりオーディオブームだったからでしょう。

当時から営業しているレトロな喫茶店に行くと、今なおぶら下がっているのがビクターの全指向型の球形スピーカーだったりします。球面のバッフルに低域用の13cmコーン型が四つ、高域用7cmコーン型が四つ付いた球形のスピーカーです。読者の方も見覚えがあるのではないでしょうか?

音自体はそれほど優れたものではありませんが、当時ビクターは4チャンネルなどサラウンド音場再生に力を入れていました。アンプやスピーカーだけでなく、音源となるレコード自体に4chのソースを埋め込み、そのソースを取り出すために専用のピックアップカートリッジも開発するという力の入れよう。このシステムはCD-4(Complete Discrete 4)と呼ばれていましたが…。

しかし当時はサラウンドという概念自体あまり受け入れられず、それよりも目の前に現れるリアルな音像を重視する傾向にあり、クオリティに問題がある4chはあっというまに姿を消すこととなるのです。

しかし、姿を消した跡に、ドルビーサラウンドシステムが頭角を現し、ボーズやヤマハのDPSなど、AVに欠かせないサラウンドシステムが進化することとなったのです。ビクター、ちょっと早すぎたかも。

ビクターの球形無指向性型スピーカー「GB-1H」はそんな当時を垣間見ることのできる製品です。もし街角の喫茶店で見つけたら、オーナーに声をかけてあげてください。

VICTOR/ビクター 球形無指向性型スピーカー GB-1H
2ウェイ8スピーカー密封式球形無指向性型

・スピーカー(左右合計)
低域用 : 13cmコーン型×8
高域用 : 7cmコーン型×8
・インピーダンス:8Ω
・最大入力:100W
・周波数特性:35Hz~20kHz
・最低共振周波数:80Hz
・クロスオーバー周波数:3.5kHz
・出力音圧レベル:88dB/W/m
・外形寸法:340φmm
・重量:9.5kg
・発売:1974年(球型スピーカーは1969年ビクターのGB-1Aが初代)

2009-07-24