[31]ハイファイセット

2017年1月2日

ハイファイセットというのは1974年結成されたコーラスグループである。メンバーは山本潤子、山本俊彦、大川茂の3人で、前身は1969年頃より活躍していたフォークグループの赤い鳥。メンバー5人のうち後藤氏と平山氏が抜けて「紙ふうせん」となり、残りの3人が「ハイファイセット」となった。

ハイファイセットという英語の意味はいわゆるステレオセットのこと。それまでの蓄音機から発展して、左右から音が出て驚異的に音質のいいことをハイファイといっていたが、その装置のことをハイファイセットといった。

「紙ふうせん」となった二人は、どちらかというと穏やかで子守唄風の聞かせるデュオグループとなった。紙ふうせんはもともと富山の薬売りが持ち歩いていた子供向けの販促玩具。グループ「紙ふうせん」も素朴なことではぴったりとしたイメージだ。

一方3人組のハイファイセットは山本潤子のクリアなヴォーカルを生かし、ポップ路線をまい進していたように思う。おしゃれでセンスがあり歌唱力も抜群。発売されるレコードもクオリティが高く、オーディオ装置の聞き比べをするのによく使われた。まさにハイファイであった。

ヒット曲としてはフィーリングが有名だが、荒井由実の曲を多く歌っていたのも特徴。むしろ本家荒井由実よりハイファイセットが歌ったことにより世の中で広まった曲も多い。デビュー曲「卒業写真」は荒井由実の曲だがハイファイセットが歌っている印象が深い。

荒井由実はお世辞にもうまいといえなかった。荒井由実はライブをあまりやらず、テレビ出演もしないので有名だった。理由は簡単。歌が下手だからだ。ところがレコードではどういうわけか聞かせる。当時のレコード技術は相当なものだ。下手な歌手でも歌唱力抜群にしてしまうのだ。

そのユーミンも今ではちゃんと聞かせる歌手に成長しているが、当時ハイファイセット特に山本潤子の功績は大きいと思う。山本潤子の歌唱力無しに今のユーミンはなかったと言い切ることさえできる。

歌唱力を誇ったハイファセットも今は解散状態。理由はメンバーの大川氏が事件を起こしたからだ。山本俊彦氏はプロデューサー業に専念しているが、山本潤子氏はソロ活動を行なっていていまでもコンサートでその歌声を聴くとができる。コンサートには森山良子氏や白鳥英美子氏などが顔を出すこともあり懐かしい限りである。たまにはコンサートに行って忘れかけていた青春を思い出すのも悪くかなかろう。

2002-12-04