[30]ザ・ベンチャーズなど

2017年1月2日

団塊の世代はプレスリー世代とも言われるが、それよりちょっとあとの世代はビートルズ派とベンチャーズ派に分かれる。というより世の中の人間を二分して俺はベンチャーズ派だ、いや俺はビートルズがいい、というようなことを言っていたような気がする。

そういう人たちが年をとり、今の音楽業界を支えているといって過言ではない。その証拠に、TVやラジオから流れている曲たちのなんと懐かしいこと。つまり凄腕音楽プロデューサーの心に底に流れるものが今に具現されているのだ。

久しぶりに神田神保町~駿河台下を歩く。このあたりは黒澤楽器店や下倉楽器店など楽器屋が多く並び、一本奥に入ると質屋があって新品楽器は買えない貧乏学生には嬉しい街でもあった。

様子はだいぶ変わってはいたものの、楽器店はたくさんあって活気があるのが嬉しい。そこで、とある楽器店に入って尋ねた。「ベンチャーズやりたいんですけど」

じつはこういう問いがすごく多いのだという。ベンチャーズが流行っていた時期は小学生あるいは中学生で、エレキギターなど買えるわけが無い。仕方なく兄貴のぼろいクラシックギターやウクレレでお茶を濁していた世代が私たち。それがそろそろ定年を迎え、閑と金もできた。で、昔やりたかったベンチャーズに今こそ挑戦するというわけなのだ。

ベンチャーズといえばモズライト。モズライトとはエレキギターのメーカーだ。1960年には3万円もしたが、今でも同じ3万円くらいで買える。といっても3万円で買えるモズライトは日本製で通に言わせると偽物ともいわれる。本国のモズライトUSAはやはり30万円くらいはしてしまう。しかし僅か30万円で青春が取り戻せるなら安いもの。そんな理由でモズライトは結構売れているという。モズライトを買った年配のオジサンのやることは1つ。ベンチャーズしかないのである。

ビートルズは誕生以来どんどん変わっていった。変化しながらもその時々に全世界の若者支持されていた、その実力は驚嘆に値する。今でもビートルズは音楽界に影響を与え続けている。

一方でベンチャーズは変わらないことに支持を得た。40年経った今でもそのサウンドは変わらない。メンバーは亡くなったりもしたが、その息子が代わりを務めている。半世紀も続けばこれはもう伝統といって良いだろう。

変わっていくことが大事なこともある。しかし変える必要の無い良いものもある。オーディオで言う往年の名機。真空管のアンプ、スピーカー、アナログプレーヤーなど。これらはもはや伝統文化である。意識して守っていかなければならない。

2002-09-10