[18]日本マランツ

2017年1月1日

秋葉原のヤマギワ電気の5階では、いつもアルテックA-7が鳴っていた。決して良い音ではないけれど、フロントロードホーンの圧倒的音圧とセクトラルホーンの中高音スピーカーの持つ迫力に雰囲気で参ってしまっていた。これとそっくり真似たスピーカーシステムが音響から発売されていて、これは同じ秋葉原の昭和通にあった音響のショウルームで聞くことが出来た。音響のシステムは音は洗練されていたが、なんか面白くない。買う気にはならなかった。もっとも買う金も無かったが。

ヤマギワ電気で鳴っていたA-7を鳴らすアンプは、プリはJBLそしてパワーアンプは必ずマッキントッシュかマランツだった。そして、こういうでかいスピーカーを鳴らすには、マッキントッシュかマランツでないとダメなんだと思い込ませる何かがあった。

そういういきさつで、私だけではなく往年のオーディオファンにとってマッキントッシュとマランツは特別なものだったと思う。しかし、マランツにはある事件が起こった。

その頃日本には通信機で有名なスタンダードというメーカーがあった。おりしもオーディオブームである。よく覚えてはいないがアンプやレシーバーなども作って売っていたように思うが、その頃国産メーカーといえばサンスイ、トリオ、パイオニアと決まっており、誰もスタンダードのアンプを買おうとはしなかった。つまり通信機器では一流でもオーディオ界では三流だったのだ。

ところがこのスタンダードとマランツが提携して、スタンダードは日本マランツと社名を変更。オーディオ界へ殴り込みをかけたのだ。最初は、みな歓迎したと思う。マランツが身近になった。だれしも喜んだ。しかし、その後発売されたマランツのプリメインは5万円台の超安物。そのほか国産メーカーと同じようにフルラインでオーディオコンポをラインナップした。マランツのエンブレムは光っていたが出てきた音はマランツではなかった。それ以前に安いマランツはそのこと自体でマランツではなくなっていた。それより、よく米マランツがこういう製品を出すことに賛成したものだ。

今まで最高級のロゴであったマランツが安かろう悪かろうの製品を出したことは当時大事件であった。しかしそのことを声を大にして叫んだ評論家は私の記憶には無い。そこそこの評論をしていたと思う。しかし誉めてはいなかったようにも思う。

しかし今でも日本マランツが健在であるのは、このときの英断の賜物ではないか?そう思うことがある。あのとき、日本マランツがマランツブランドに恥じない製品を出したとしよう。確かに当時は大いに受け入れられたかもしれないが、今現在まで生き残っているという保証は無いし、固執しているメーカーほど生き残っていない。

今思い起こせば、このときマランツは大いなるリストラをしたのかな、と思う今日この頃。

ちなみに、最近、日本マランツと八重洲無線は共同で出資して、新しく通信機器の会社を作った。その名はスタンダード株式会社とな。これは一体どういう事だ?

2000-09-17