マニュアル車の楽しみと憂鬱はギアチェンジにあります。ある人はギアチェンジをうっとうしく感じ、ある人は楽しく感じる。今から30年くらい前はオートマチック車はほとんどありませんでしたから、好むと好まざるにかかわらず、ギアチェンジをしなくてはなりませんでした。うっとうしく感じる人が多く、それがオートマチックの普及に貢献したのではないかと思います。
しかし、エンジンが小気味良く吹けあがり、ギアがカチッと決まるマニュアル車はなかなか楽しい。今はバスやトラックでさえオートマチックになってきましたから、あえてマニュアルを選ぶというのは一種の贅沢になっています。つまりクルマ好きな人がファントゥドライブのためにマニュアル車を選ぶわけです。
ギアチェンジがうまくいかなくてギクシャクした走りになるのは、車速に応じた適正なギアと回転数が合っていないからです。
例えば一速に入れて発進、20km/hに達した時にエンジンの回転数が3000回転だったとします。そのあと2速に入れたときに時速20km/hを保持するには1500回転必要だとすれば、右足でアクセルをコントロールして1500回転をキープしなければなりません。これが1000回転だったり、4000回転だったりすると、車速とギア比とエンジンの回転数があわず、つんのめったりギクシャクした走りになります。
今の車は「シンクロ」という機能があって、回転数が合わなくてもギアが入りますが、昔はシンクロがなかったですから、ダブルクラッチ(クラッチを2回踏む)でエンジンの回転数を合わせてやらないとギアが入ってくれなくて、ガリガリギアが鳴ったものです。
1速から発進して、つんのめってしまうのは、2速につながる前にアクセルを放してしまうから。一速はギア比が低いので2速につながる前にクラッチを放してしまうとエンジンの回転数が足りず、強力にエンジンブレーキがかかってつんのめります。これを防ぐには、クラッチをアバウト踏んで半クラッチを使う。右足でアクセルを適当に吹かす、などで解決します。
【クラッチを使わずに、ギアチェンジをする方法】
昔はクラッチペダルを踏んでもクラッチが離れないなど、今では考えられないトラブルがあったようです。そんなときに使ったテクニックを紹介します。
◆発進・加速
まず一速にギアを入れます。そのままの状態でエンジンキーを回すとセルモーターが回ってクルマがぐぐっと動きだします。すかさずアクセルを吹かし、そのまま加速します。
20km/hくらいに達したら、アクセルを離すと同時に、ギアをニュートラルにします。そして、そのままギアを2速に入れます。ギアはなかなか入ろうとしませんが、ギアを2速側に押し付けたまま、ここでアクセルを軽くあおります。すると車速と回転数が合った瞬間にスコンとギアが入ります。
同様にして3速、4速とシフトアップします。
◆減速・停車
これは同様にシフトダウンしていくのですが、シフトダウンする時はエンジンの回転を上げますのでなかなか回転数が合わず、かなりガリガリギアが鳴きます。けど、強引に押し付けているとこれまたスコンと入ります。
同様にシフトダウンしていき最後に1速に落とし、エンストさせ停止します。
以上のようなテクニックを使えば、クラッチもブレーキも使わず、ギアとアクセル操作のみで運転が可能です。しかし、こんなことを公道でやるとクルマを傷めますし、気が散って事故を起こしかねません。しかし、エンジンの回転数と車速とギアの関係を知ることは大事なことで、これを知っていれば、格段にマニュアル車の運転が楽しくなりますし、また上達します。