メーカーのクルマ作りもシビアになってきて、ファミリーで使うのか、アウトドアスポーツに使うのか、あるいはただ単に通勤の足として使うのか、その使われ方を研究してクルマ作りをするようになってきました。
通常のファミリー的使われ方をするのであれば、ドアは4枚あり、女性でも運転しやすいようにオートマチック車で、ボディはコンパクト、でもファミリーで食事に行くときでも家族5人が全員乗れる、このようなクルマが便利なはずです。
しかし、世の中にはクルマを意のままに操りたい人も多く残存しており、うれしいことに、そういう人たち向けのクルマもメーカーは作ることを忘れていません。そして、最近ではそういう人たちをニンマリさせるような6速ミッションが「その手のクルマ」には登載されていたりします。
6速ミッション車は、もちろんマニュアルミッションであり、別の言い方をすれば手動ギア車であり、オートマ限定免許の人には乗れないクルマです。つまりシフトノブの頭には数字が6まであり、足元にはクラッチペダルがあります。
日本でのオートマの歴史がすでに30年を超えるというのに、いまだにマニュアルミッション車が存在し、しかも進化しているということは、ミッション車にはそれなりに魔力があるからです。エンジンが吹き上がると同時にリニアに加速するあのカチッとした感じは、ゆるゆるもったり感のぬぐえないオートマ車には無いものです。
では、なぜ6速なのか?ということですが、エンジンというのは特にスポーツエンジンはある程度エンジンを回していないと面白くありません。通常走行でも3000回転以上、できれば4000回転以上が面白い。ところが、車速が上がってギアをシフトアップするとギア比の関係で途端に回転が落ちてしまう。そうすると急に走りに活気がなくなってしまうのです。
活気ある走りを継続するには、どんな車速においても常にエンジンの回転を落とさないようにしなければなりません。ということはギアはなるベく細かく設定されていたほうがいいということです。細かく設定されていれば、エンジンの回転を落とすことなく適切なギアを選んで走れるからです。しかしギアが多いほどギアチェンジが忙しいことはいうまでもありません。
昔はコラムシフトでギアは3速でしたが、その後シフトノブが床面に移り4速が普通になりました。1970年ころから燃費を気にするようになり、4速に燃費重視のオーバードライブギアを追加した、OD付5速がミッション車では当たり前になりました。
しかし、その頃スポーツ車にはクロスレシオの5速が密かに流行っていました。同じ5速といっても、クロスレシオ5速は5速目がトップのミッションです。当然ギア比が細かく設定されホットモデルに登載されていたものです。最近の6速ミッションは、このクロスレシオの5速ミッションにオーバードライブギアを追加したものが主流です。しかし単に追加したのではなく、エンジンの性能と見比べ設計しなおしたのも多いです。
車名アルテッツァ(2.0L)フェアレディZ(3.5L)ホンダNSX(3.2L)
1速 3.874 3.794 3.066
2速 2.175 2.324 1.956
3速 1.484 1.624 1.428
4速 1.223 1.271 1.125
5速 1.000 1.000 0.914
6速 0.869 0.794 0.717
上記はトヨタアルテッツァ、日産ニューフェアレディZ、ホンダNSXの変速比ですが、微妙に味付けが違うのがわかります。ギア比の大きいほどスピードは出ませんがダッシュ力があります。アルテッツァはスタート時に猛然とダッシュする味付けでしょう。
2速3速の設定ではフェアレディZが面白いですね。ギア比を大きくしてトルクを稼ぎ、排気量の大きさもあいまって時速40km~70kmあたりで活気の有る走りが期待できます。
ホンダNSXはわが国が誇るスーパーカー(?)ですが、ギア比を見る限り、山道やコーナーリングを楽しむというより、高速クルージング向きの設定でしょう。