[057]鏡餅
餅は古くから神様の食べ物として用いられてきました。農耕民族である日本人が五穀豊穣を神の感謝するの自然の成り行きであり、また伝統であるともいえます。
お正月は神様に鏡餅を供えるので、お供えとも言います。新年11日までお供えし、鏡開きを待ってお下がりをいただきます。昔、使った鏡は銅で作られており、丸い形をしていました。丸い形は心臓をかたどったものとも言われ、鏡は魂を写し出す神器でもあることから非常に大事にされます。鏡餅は丸いお餅という意味です。
鏡餅が二段に重なっているのは、円満に年を重ねるという意味でしょう。また大小の餅は陽の太陽と陰の月を表し福徳重なるという意味もあります。年神様に1年無事であったことを感謝する気持ちを込めて飾る行為は、歴史のある日本人固有の文化です。
様式を重んじることの上に成り立ってきた日本の文化。鏡餅を供える「カタチ」にもさまざまな願いが込められています。鏡餅に使う添え物を説明します。
鏡餅は三宝(さんぽう)という台に載せ、下に四方紅(しほうべに)を敷きます。四方紅はお供え物をのせる色紙で、四方を「紅」でふちどることで災を払い一年の繁栄を祈願するものです。
鏡餅の上には橙(だいだい)を置きます。木から落ちずに大きく実が育つ橙にあやかって、代々家が大きく栄えるようにと願った縁起物です。
御幣(ごへい)は紅白の紙を稲妻状に折ったものです。赤い色は魔除けの意味があります。紅白ではなく白一色のものは四手(しで)といいます。四方に大きく手を広げ、繁盛するように、という意味があります。
海老(えび)はその姿になぞらえ、腰が曲がるまで長生きできるようにと祈るものです。また裏白(うらじろ=シダ)は心が白く二心が無いという意味です。扇(おおぎ)は末広(すえひろ)ともいい末長く繁栄していくようにとの願いが込められています。
なお、鏡餅は床の間にかあるのが正式で、床の間が無い時には玄関の正面や客間の棚に飾ります。