[05]ピュアな恋(その2)

パトラッピーの友人が私に「彼はタイレストランでアルバイトをしていたんだ。それがイミグレーション(移民局)に見つかってしまって強制送還されるんだ」と。それって、ハワイに居られなくなるってこと?
私は泣きそうになりました。友人いわく、パトラッピーはタイには帰らずにハワイを離れて彼の知り合いがいるアメリカ本土、バージニア州に行くつもりらしい。学校に来れなかったのは、移民局オフィスで拘束されていたらしく、それもあと3日以内にハワイを離れなければいけないらしい。私はあまりのショックに金縛りにあったような気がしました。
その夜、パトラッピーが私のアパートに来て、すまなさそうに事情を話してくれました。パトラッピーは私も一緒にバージニアへ行こうと言ってくれました。一瞬、その言葉は嬉しくて一緒について行きたいと思いました。彼のことを好きだし、できれば離れたくない。でもやっぱり行けない・・・「一緒に行きたいけど行けない」この言葉を伝えるのに2日かかりました。もうあと1日しか一緒にいられない。できる限り、私とパトラッピーは一緒に残り少ない時間を一緒に過ごしました。
飛行機の出発時間は夜の11時だったので、早朝から一緒にいました。私がげっそり落ち込んでいるのを見て、パトラッピーは一輪のバラの花を買って元気づけてくれました。パトラッピーは「離れていてもだいじょうぶだよ」と何度も言ってくれました。空港へ行く時間が近づくにつれて、私は気分が悪くなってしまい、やっぱり彼について行こうかと考え始めました。でも、最後は泣きながらパトラッピーを見送ったのでした。
その頃はメールというものがなかったので、ひたすら手紙を書きました。たまに電話で話もしました。私はハワイという場所柄、朝から夜まで忙しく、彼に対する寂しさも慣れていき、手紙を書く回数がだんだん減っていったのです。
寂しさを紛らわすために、日本人同士で遊ぶことが多くなり、パトラッピーの存在がどんどん消えていきました。残念ながら、自然消滅という形で終ってしまいましたが、彼はバージニアで大学を卒業し、タイに戻り、現在はタイ航空の客室乗務員をしています。1年に1回くらい、成田空港から電話がかかってきます。(残念ながら会ってはいませんが)私達は本当に短い交際期間でしたが、思い出はいっぱいで素晴らしい時間を過ごしたと思っています。
谷川ともみ