[04]ピュアな恋(その1)

今回も私がハワイに留学していた頃のことを書きますが、クラスメイトの中にタイ人の男の子がいました。名前は「パトラッピー・ユワプン」。私が住んでいたアパートの真向かいのアパートに住んでいて、お互いのバルコニーに出ると、道を1つはさんでいるけれど、会話をすることができました。
私のルームメイトが何故か双眼鏡を持っていて、タイ人の彼のアパートをレンズ越しにのぞいてみると、いつも数人で楽しそうにご飯を食べているのでした。たまに誰かがギターを弾いていて、みんなで歌っていたり、ある時は円陣になって夜遅くまで話込んでいました。
ある日、授業が終った後、パトラッピーに「いつもたくさんの友人がいて楽しそうにしているね」と声をかけました。すると、彼は今度夕食に招待するよと言ってくれたのでした。そして、私と2人のルームメイトがパトラッピーのアパートで夕食をごちそうになることになりました。そこにはパトラッピーの他に6人のタイ人がいて、そのうちの3人も近くに住んでいるとのことでした。
夕食はもちろんタイ料理。それも超本格的で、鍋の中に鳥一羽まるごと入っているではありませんか?!その鳥には驚いたものの、料理は最高に美味しく、食事中もいろいろ気をつかってくれ、とても楽しく過ごすことができました。
彼達はたくさんの友人と一緒に過ごすことを好み、とても話好きで人なつっこいのです。同じアジア人だからかな?親近感もあり、この日をきっかけに仲良くなっていきました。お互いの母国語が英語ではないので、慣れない英語でコミュニケーションは大変でしたが、彼らの人なつっこさと優しさで私達も楽しく過ごすことができました。
なんといっても、彼らの素朴な笑顔は私のような都会っ子育ちには何よりも魅力的でした。なんとなくグループ交際のようなものが始まり、次第に私とパトラッピーと2人で話すことが多くなり、学校にいても彼のことを意識するようになりました。
いつもはグループで遊ぶことが多かったけれど、徐々に2人でデートした後にみんなと合流するというパターンに変わっていきました。私は人生の中でこれほど純粋なデートはしたことがないと今でも思います。それはとってもシンプルで、海岸で貝殻を集めたり、彼が歌を歌ってくれたり、毎日がとてもハッピーでした。しかし、2、3日、彼が学校へ来ない日が続きました。心配になった私は彼のアパートへ行くと彼はいませんでした。
(続く)
谷川ともみ