第1回 スタッフを困らせるYさん

2018年8月28日

Yさんは、去年の秋頃御入居されてきました。

脳梗塞で、半身麻痺という病状でした。最初の情報では、糖尿病なので、1日千三百キロカロリーと言う食事制限がありました。困ったことは、制限があるにも関わらず、要求はとてつもなく大きかったことです。

うちのホームは、決まった時間にお茶やおやつを出すことになっているのですが、Yさんに、おやつを出してしまうと、簡単に1日の食事制限を越えてしまうのです。

最初は、スタッフの言うことにも耳を貸していたYさん。牛乳を持ってこい。おやつをくれ!そんな要求に、1日の食事制限があることを伝えて牛乳は、「1日一杯にしましょうね」とか、おやつは、「夕食が食べられなくなるので、控えましょう」そう促すスタッフに、「はい。そうします。」素直に、耳を貸してくれていました。

しかし、1日、1日と経っていくたびに、Yさんの様子が変わっていきました。まず、弱いスタッフを見極め、自分の欲求を拒否できない事を解った上で、牛乳が飲みたいとか、パンが食べたいとか、要求するようになってきました。経験豊富なスタッフは、こう言うときの対応がとても上手ですが、上手く対応出来ないスタッフもいます。Yさんは、立場の弱いスタッフを見極めて、要求を満たせないことをさとると、スタッフに嫌がらせをするようになりました。

わざと、ナースコールを鳴らして、立場の弱いスタッフが出るまで鳴らし続けます。そのお目当てのスタッフが、対応すると、「トイレに行きたい」そう言われます。当然、排泄誘導のために、トイレに行きます。するとYさんは、「でねえや!」と、尿意は、自分の間違いだったと訴えられ、スタッフは、お部屋のベッドにお連れします。お連れすると、わざとパンツを脱いで、ベッドの上で放尿されます。その後、ニヤニヤしながら、「早く片づけろよ。それがお前の仕事だろ!」そう言って、シーツを交換させます。

これが、Yさんの意地悪の序章に過ぎなかったことは、この時まだ誰も気づかないでいました。これを機に、Yさんの意地悪は、どんどんエスカレートしていくのでした。
2003.2.16
永礼盟