第33回 夜勤
いつもご購読、ありがとうございます。心から感謝いたします。遅くになって夏がやって来ました。今は、その暑さも何処へやら。秋を感じ、冬の薫りがする今日この頃、体調崩されていませんか?
そんな季節の変わり目を感じながら、相変わらず我がホームで奮闘しています。今日は、いつもと違う顔を見せる、夜勤の光景をご紹介したいと思います。
月に何度か夜勤をしますが、正直あまり好きではありません。体のリズムが壊れることが主たる理由です。夜勤専任の方には、本当に頭が下がります。人が寝ている時に、苦労しているって大変なことだと思います。
我がホームの場合、夜勤専任スタッフと、その公休の関係で日勤スタッフが夜勤に入ります。比較的、夜の方が時間に正確です。何時に何をするか、時間で業務を回せるからです。職員にとってはとても楽です。しかし、うちの会社の教えは心のケアを大事にするので昼間は、時間通りに業務が回らないのが実状です。
夜は、だいたい九時を過ぎれば静かになります。夜の難しさのは、徘徊です。徘徊する方を見守りながら、コール対応と昼間に片づけられなかった仕事をこなします。日によって、当たり外れがあります。こんな言い方をしたら怒られますが、現場ではそんな言い回しがされます。「今日は、Mさんが寝られない様子で大変でした。夜通し歩かれ、他の居室へ進入してしまいました。」朝の申し送りで、こんな事が言われれば外れの日で、コールもなく徘徊癖の方が静かな夜は当たりと。
今、徘徊される方が少なくなったので負担が軽くなりました。以前はホームの半分の方が徘徊癖があったので、全く仮眠がとれませんでした。他の入居者からのクレームで一番多いのは、夜中に部屋に進入してくる徘徊者が居ると言うことです。鍵を閉めれば、夜通しノックをし続けます。気がつかずに放っておけば、ノックは蹴りに変わり、やがて凶器を持って、ドアをぶち破ろうとさえします。そう言う事がないように、徘徊される日は、手を繋いでホームの中を散歩したり、意識を他に向けられるようなケアを心がけます。
もう一つ厄介なのは、ナースコールです。大体はトイレコールですが、寂しいコールと、悪戯コール。たまに、間違えコールもありますが、業務を回す中でこのナースコールはとても厄介です。
こないだ、メルマガを書くために、我がホームのコール常習犯を特定してみました。3人の入居者様が、夜勤帯のコール魔でした。私は、比較的夜のコールは負担ではありません。呼ばれたら行けば良いからです。こんな事を夜勤のスタッフに言ったら怒られますので、直接は決して言いませんが、昼間はコールされても行けないのです。それが、精神的な重圧になります。しかし、夜はコールがあったら行けるのです。見回りの合間は、余裕があるからです。
この日、徘徊されていた方も、直ぐにお休みになり『当たり』の日だったようです。しかし0:00をまわった所で、コール地獄が待っていました。3人のコール魔のうち2人は、殆ど悪戯コールです。5分に1度、ひどい時には、コールのボタンを押しっ放しの時もあります。もう1人は、頻尿なので30分に1度くらいでコールがあります。呼ばれるたびに居室に行き、お伺いをたてます。コール魔の1人は、メルマガで何度かふれたYさんです。
トイレ、寝かせて、水飲ませて、下連れてって、部屋に戻して。コールの度にその要求を受容しました。以前、あれだけ意地悪をされたYさんですが、今ではとても頼りにしてくれています。そう思うのは、私の思い上がりとして、お伺いを立てる度にお話しをお聞きすると、安心されたのか、その後は静かにお休みになられたようでした。
2:00の見回りまで、数時間の間コール対応に追われました。先輩から教わったコール対応があります。コール対応と、仮眠がいっしょに出来る方法です。会社的には絶対にタブーですが、現場ではしばしば行われてきたケアです。その方の居室で、過ごすと言う物です。実はこの日も、田口さんのお部屋でお話しをしながらコール対応していました。「ああ、呼ばれたから行ってきますね。」と田口さんの部屋から、Yさんの部屋へ。終わったらまた田口さんの部屋にお邪魔すると。
と言うことは、殆どこの2人以外はコールをしないと言うことです。Yさんもお休みになり、田口さんと夜通し語り合いました。そんな中、流れていたテレビから我がホームと同じ光景が飛び込んできました。
前後の話しは良く覚えていませんが、テレビから「いあ~!!」と言う叫び声がして、私も田口さんもテレビに気がついたのです。入浴を拒否する入居者を、なんとか説得している光景です。田口さんと見入ってしまいました。「うちにも、こんな光景があるよね。こんな多くないけど。」ボソッと田口さんが言いました。田口さんは、痴呆があります。でも、テレビの光景と我がホームの光景で、職員数が違うことを指摘したのです。
テレビでは、入浴を拒否する入居者に優しく説得する男性職員の姿がありました。「いや~!!なんで私の物を盗むの!止めて~!!」と、殴る蹴るの暴れようでした。その入居者に、「うん!そうだね。うん!」と訴えを受容する職員の姿を見て、何処のホームもにたような光景なんだと、とても興味深くなりました。でも、入浴に5~6名のスタッフが居てビックリしました。テレビだから人数が多いのかなと思いましたが、「普通はあんなに多くないよなあ」と、やらしい気持ちでテレビを眺めていると、教壇に立つ1人の男性にスポットが当たります。生徒の心を掴むのが上手いとコメントされていたような気がしますが、黒板に「ユ○ク○」と書かれ、某アパレルメーカーを題材に何やら介護の説明をしているようでした。熱く語ったあと、振り返るとTシャツの背中に、ユニくろと手書きで書かれているのを見て、生徒達は何やら爆笑していました。ここでその状況を書いても全く面白くなくてすいません。しかし、田口さんも爆笑されていました。
ある夜勤の日、入居者の部屋のテレビから違うホームの光景が流れて来て、入居者と一緒にそれを見つめた事が、いつもと違う夜勤業務だったかなと思います。何処のホームも、問題がある度にカンファレンスを行い、奮闘されている姿に、自分も頑張らなくてはと言う気持ちにさせられました。
そして、人が寝ている間にご苦労されている夜勤スタッフの皆様、本当に頭が下がります。お体、大切にして下さい。
2003.10.21
永礼盟