第37回 四角形1
第37回 四角形1
こんにちわ、永礼盟です。ご購読ありがとうございます。体調くずされていませんか?寒くなり、富士山が綺麗に見られるようになりましたね。ああ、冬がやってきます。
施設長がいなくなって少し経ちました。今だに連絡はつかず、元気なのか、そうでないのか、こんな神隠しにあったような気持ちは初めてです。きっと、バレーボールを見ながらワンカップでもやっているだろうと、勝手に思い、自分を慰めています。
いなくなっても、ホームの生活がなくなるかと言ったら、なくなるはずもなく、以前にも増して問題が次々に起こっていきます。職員は次々に倒れ、その欠員のために、また誰かが入院していく。一体、何が正しく、何が間違っていると言うのか?
新しい施設長が来ました。とっても元気で、とっても熱い人です。硬派で、今時珍しいぐらいの昔気質な人。その人が来て、一つ一つ問題を解決していこうとしているのでした。彼は、こう言いました。「頑張っていこう!」と。私は、はっきりと「もう頑張れません。」そう答えた。
既に、何人の施設長が替わっただろうか?これで六人目の施設長だ。数年でこれだけ施設長が替わるホームも珍しいのではないだろうか?少し前なら、自分が何か悪影響を与えているのではないか?そう考えたかも知れない。しかし、一度職員のそう入れ替えを行っても全く変わらなかったホームだった。きっと、要因は他にあると思われた。職員は頑張っているのである。頑張っても、頑張っても、何もよくならず、辞めていくか、倒れていくかのどちらかだった。昔から我がホームを知っている職員も、自分を含めて2人となっていた。
いなくなった施設長も、胃潰瘍と十二指腸潰瘍だった。来たときは、あんなに元気だったのに、最後は、死相まで出ていた。飯も食わず、酒ばかり飲み、来る日も来る日もホームの問題と、家族の不満を自分に集めた。
施設長に問題がなかったわけじゃないが、完璧な人間はいない。彼は、十分に施設長の仕事をこなしていたように思う。目に見えたのは、施設長と、その下の人間の不仲だった。施設長補佐が、理屈ばかりで、仕事をしない人だった。全ての問題を施設長が処理しなければならなかった。その上、我々現場の問題があっても見て見ぬ振りをし、そのまま放置したのである。なおかつその施設長補佐が、無断欠勤の嵐で、ただでさえ大変なのに、明らかにズル休みな彼を、現場の人間が許す訳もなかった。
ただ、チームワークよく仕事をしたかったのだと思う。その姿勢に何も文句を言わず、自分にも駄目なときがあるのだから、だから今は施設長補佐をフォローしようと現場は頑張っていたのである。その気持ちに泥を塗ったのは、施設長補佐自らだった。その状態に甘え、イヤ、舐めた彼は、仕事もせず、無断欠勤をし、問題は全て施設長に押しつけた。一番年上なのに、その10も年下の人間に嫌なことは全て押しつけた。自分は、理屈だけをこねくり回していた。
不満は、職員同士の愚痴になり、悪口になった。補佐の悪口を言うと、スッキリする。そんな最悪な状態になった。もう不満は止まらなかった。それは一気に爆発し、今までのストレスが全てそこに集まった。誰が見ても不味い人だった。その結末が、施設長の逃亡だった。
日勤、夜勤、看護士、厨房、の4点を結ぶと四角形が出来る。その形が崩れ始めた出来事だった。
<つづく>
2003.11.21