第65回 鰹

2018年10月25日

こんにちわ永礼盟です。ご購読ありがとうございます。もうすぐ夏がやってきます。今年も海にビールに花火にと、夏を満喫したいものです。

我がホーム、久しぶりのイベントを行いました。昨年の納涼祭以来のイベントだった気がします。何気なく立ち上がった企画でした。自立の利用者様に喜んで貰える企画はないか?と言う発想から、ボソッと私が「五月だから鰹食いたいね。」そう発言した事から今回の鰹パーティーが決まりました。

鰹一本を、利用者の目の前で捌いて行こうと言う企画です。リーダーの頭の中には、アッという間に考えが浮かび、誰も知らないうちにメニューも企画も決まっていました。最初は、リーダーが捌く予定で、『なんちゃって企画』のつもりだったのに、寿司職人だった事のある本部の凄腕や、食材を担当する部署2名のバックアップも借り、かなりの大イベントに成長しました。

食材部署のバックアップは強力で、鰹は築地から取り寄せられました。当日まで見られなかったのですが、色つや、大きさ、言う事なしの一等品が送られていました。勿論、丸ごと一本です。厨房では、着々と料理の下準備が整えられます。

我々は、普段の通常業務をこなしながら、三時のおやつが終わった所で食堂の飾り付けに取りかかります。ランチョンマットにお品書き、それぞれの食器が奇麗に並べられて行きます。『食』のプロ3名のバックアップは強力でした。メインは、鰹の刺身とたたきですが、前菜に、山菜の天ぷら、すまし汁までが今日のメニューです。その下準備が完璧に整えられました。

時間前から少しずつ集まりだす利用者の皆様。我々は、自立の利用者に声かけし、車椅子の誘導に行きます。以前は、1~2名で行っていた誘導も、今日は倍の人数が居ました。心にも余裕ができます。

いいタイミングで、カツオショーが始まりました。元寿司職人の皆川さんが、ドンッと鰹を掲げると、「おお!」と言うどよめきが起こります。普段、あり得ない光景です。その鰹が、利用者の目の前で捌かれて行きます。その光景に酔いしれる利用者の方々、提供している我々も嬉しくなります。

厨房では、バーナーが用意され、捌かれた鰹が厨房に運ばれます。赤い身の外側をバーナーであぶり、利用者の前では刺身の盛りつけがされています。刺身とたたきの、見事なコラボレートが完成しました。お席にお持ちすると、その目から満たされる美味しさに、皆様笑顔をこぼされておられました。自然と我々も笑顔が生まれます。

「美味しい!!」あちらこちらで声があがります。さあ、今度はキザミ食、ペースト食の利用者の食事を作らなければなりません。その色や盛りつけを一度ご覧いただいてから、もう一度厨房と、まな板の上に鰹が返されます。

トントントントン、まな板の上で刺身がたたきとなって行きます。キザミ食を作っていて、一品完成してしまいました。アジのたたきならぬ、鰹のたたきです。細かく刻んだ鰹に生姜と浅葱をぶっかけます。キザミ食の方にお出しする料理でしたが、「私もそれ食べたいわ!」そんな声があちらこちらから聞こえてきます。勿論料理長も快く引き受けてくれました。

リーダーも着物を着て、まな板の鰹を捌いて行きます。普段目にしないリーダーの光景に、利用者の方々うっとりされていました。リーダーと料理長の包丁さばきが、ツインギターのように音色を奏でていました。とても絵になる光景です。

やはり、全員の方を満足させる事は難しいです。今回も、満足出来ない方もいらっしゃいました。しかし、一人でも多くの方の笑顔が見られる事に意義があると感じます。利用者も、職員も、複雑な気持ちがある事は確かです。その蟠りが、いつか取っ払える事を信じています。みんなの笑顔が起爆剤となってくれる事を祈る自分が居ました。

2004.07.01

永礼盟