第21回 七夕

2018年8月29日

こんにちわ。永礼盟です。いつもご購読いただき、ありがとうございます。

島田様が帰ってこられました。本当は、すぐにメルマガに書いていきたかったんですけど、難しくて。もう少し落ち着いてから書いて行ければと思っています。

もう大分過ぎてしまいましたが、我がホームでは七夕パーティーが行われました。六月後半から、少しずつ日々のレクリエーションで飾りを作り、近くの林から笹を刈ってきてそれを飾り、とても良い物が出来上がりました。そこに、たんざくに願いを込めて入居者様からのメッセージを頂きました。

来訪された方にも書いていただけるように、沢山のたんざくを用意しました。日に日に増える願い事。改めて七夕を感じると、随分とその習慣に触れてなかったことが解りました。きっと、幼稚園生の時に雨に降られて大泣きしたのが最後かと記憶しています。

退院した島田様にも、一筆お願いしました。「何が、七夕だ!」その様に書かれていましたが、少しでもリハビリになってくれればと思います。その他にも、居室にいる子猫を幸せにしますと言う宣言だったり、世界平和を祈る物だったり、お孫さんの幸せを願う物だったり、七夕らしいメッセージが我がホームを包み込んでいました。

だんだんと盛り上がる飾り付けに、七夕当日のイベントをどうしようか検討しました。七夕って、意外とイベント性がないんですよね。お誕生日なら、バースデーカードに、バースデーケーキ。クリスマスなら、サンタさんと、クリスマスプレゼント。それぞれ企画に拡張性があると思うんですけど、七夕ってやろうと思うと、何したら良いんだろう?って、職員全員で困ってしまいました。

結局、七夕に関係のない鉄板焼きパーティーをすることになりました。ホットケーキとお好み焼きを作って食べるのと、クイズで商品を出す企画もやってみることにしました。もう一つは、生ジュースを作ると言う物です。ホームへの贈り物として、果物が沢山あったからです。七夕に、クイズと生ジュースと鉄板焼き?さて、どんな当日になるのでしょうか?

七夕当日、兼ねてから噂だった鉄板パーティーに、沢山のご家族の来訪もありました。職員全員「アチャ~」ってな物です。しかし、通常業務もこなさなくてはいけなく、入浴やパーティー以外の食事、七夕と業務で朝からドタバタしていたように思います。

なんとか形になったかな?と言うのが感想です。おやつの時間に行ったのですが、実際にパーティーがあるのかどうか、職員でさえつかめない雰囲気だったと思います。普段と変わらない雰囲気に、職員にも入居者様にも「七夕?」みたいな嫌な空気が漂っていました。

鉄板が熱くなっていく匂いを感じ、「そろそろ始めようか?」誰が言ったわけでないかけ声で、そのパーティーは始まりました。関西出身の施設長が、腕を振るいます。

お好み焼きを焼きながら、喋りが止まりません。関西だとか、関東だとか、そう言う表現は好きじゃありませんが、やはり独特のイントネーションでテンポよく喋られると、リズムが生まれます。段々と、入居者様との間にノリが生まれてきました。

我がホームは、20人前後の御入居様が居られますが、殆どの人が車いすなので、誘導に時間がかかります。その間、その喋りで、入居者を楽しませている施設長が頼もしかったです。食堂に出てこれる全ての人を誘導し終え、職員全員でパーティーのホストを勤めます。

がしかし、何か空回りで、いまいち盛り上がりに欠けるのです。全員が、この雰囲気何とかしなくては。そう思い、更に焦ります。クイズをしても、生ジュースを作っても、シーンとしています。その静かな空気の真ん中で、お好み焼きを焼く音だけが響いていました。

「美味しいね。」どこからか、聞こえていた声。唯一上がった歓声かと。なんとなく盛り上がったんだか、静かだったんだか、集まったご家族も、なんとなくばつが悪そうに「美味しかったので、お土産に持って返っても良いですか?」そう言って、お好み焼きを持って返られました。

この空気...

一体何がいけなかったのでしょうか?幼稚園生の時と同じ雨の七夕。その日に行われた七夕パーティー...みんなで、首を傾げながらその日を終えました。原因が分からないまま、今に至っていますが、思い出すとなんだか恥ずかしくて顔を伏せたくなります。

たまには、そんな失敗もあるかなと、自分を励ましています。でも、これを書いている今も、辛さがこみ上げてくるのでした。

2003.07.20

永礼盟