【第2回】有料老人ホーム歴史編(2)

2019年3月17日

もともと老人ホームとして一般人がイメージするのは、養老の滝じゃなかった、養老院という名前である。ところが、現代には養老院という老人ホームは正確にいうと存在しない。簡単にいうと、身寄りのない、乞食や浮浪者でそのまま老いぼれた感じの人を収容するというイメージは老人福祉法という法律ができてから養護老人ホームという名前にリニューアルしているのである。

こういうノリでいうと、特別養護老人ホームは特別介護の手間が途方もなくかかる方を対象とし、前回から取り上げている有料老人ホームは、財産はあるけど、家族に見放されたか、家族に面倒をみてもらうのはうとましい、プライドが傷つく方を対象としている。

有料老人ホームので、ゆりかご(老人だから老人カー?)から墓場まで敷地内で一切面倒をみてくれるところがあるのは前回お話した。ただし実際のところは、いざいざとなると、有料老人ホームから提携病院に入院、同時に有料老人ホームは退所(相談の上と退所いただくこともあると小さい字で約款に書いてある)、遺体はセレモニーホールに直送、豪華な葬儀を挙げていただくことになる。終身介護付きではあるが、看取りまでしますとは一言も書いてないのであるから、契約違反にはならないわけである。

7月に渋谷の駅近くにオープンした某有料老人ホームは、朝日新聞の半面、カラー広告で白金台の億マンション並みの夜景にライトアップされた建物として、世間の注目を集めていた。ハイソ、おしゃれ、アーバンライフ、そのままリムジンで道玄坂駆け下りるのがそっくり似合うような雰囲気だった。たぶん、団塊の世代あとのみえっぱりで、セレブに生きたい年代には大いに受けるに違いない。

考えてみれば、バスを乗り継いで、終点からさらに30分近くも歩く(それでも横浜市内)山の中にひっそりと建つ、老人ホームとは本当に、様変わりしたイメージになってきている。養老院が存在した時代には、子供や親族に見捨てられた老人が、社会の隅っこで、国の善意?で(憲法に生存権という規定がある)面倒みてもらっているというイメージが確かにあったのである。で、すごい金持ちはともかく、渋谷老人ダーゼになっていただくとして、国民所得平均値の貴方は?というのが次回の話である。

2005.07.27

辻本ゆめの