【第6回】有料老人ホーム実態編(2)

2019年3月18日

前回メルヘンチックに書いた老人ホームにおける恋愛話はまた別の機会にお話するとして、今回は有料老人ホームのおもてなしについて第一話に引き続いて、つっこんだ話をしよう。

有料老人ホームは「商売である」の一言に尽きる。とにかく、マンションの分譲と同じだから、まず居住権を売らなければならない。終身介護付きとか、24時間職員が常駐するとか、安心・親切・手厚いをモットーにしている。言い換えると、とりあえず食べさせる・オムツの交換する・監視するというサービスを保障する。

だがそれだけでは、有料老人ホームは老人福祉ご用達の特別養護老人ホームの新型と比べて、あまりも商戦を勝ち抜いて満室売り切れ御礼にはほど遠い。そうかといって最後まで面倒みますという嘘もつけないので、何を売りにするか。「早い、旨い、安い」の吉野家の牛丼みたいなセールスコピーを考えると「手厚い、心地よい、楽しい」なんかはいいかもしれない。当たり前すぎることほど、その手のサービス提供は難しいものである。設備を整えるだけでは当然達成できないだろう。

特に「楽しい」というキャッチの実践はとても難しい。年寄りの生きがいだとか、趣味、QOL(生活の質)の向上というのは現実的にはとっても抽象的で、まただれにでも共通して満足が得られるという一般ターゲット水準が不明瞭である。また、実に人間というものは欲深なもので、最初は満足に感じられても慣れによる厭きや不満がでてくる。

例えば、毎朝モーニングケアのあと、ハーブティをサービスするということを企画しても、おや?!と思ってもらえるのはせいぜい2・3日である。この夏も目白押しの納涼祭みたいな行事は1年に1回だからそれなりに盛り上がるが、日常生活の中で、「楽しい」生活を送っていけるように支援するというのはたいへんなことである。

近頃は、熱海や伊豆だけでなく、天然温泉が本当にある?と思われる地域に掘り当てた温泉付きの有料老人ホームも増えてきている。温泉はある程度お金をかけて深く掘れば、日本という地層をもつ国内はどこでも温泉は湧き出るのだそうである。温泉の質や温度や湯量をあんまり重視しないのであればの話であるが。

数年前、全国の某有名温泉地の何箇所が入浴剤を入れていたり、薬効をほらふいたり、足し湯をしていた実態(間違いなく内部告発)が報道されたことがあった。伊豆にある高級有料老人ホームだから、温泉についても信用できると信じて疑わない人間の方がおろかなのである。ましてや、温泉だから、薬効を考えて毎日お湯は全部入れ替えないので、垢と汚れでにごっていてどろどろしているのを効果的と言って説明しれという某老人ホームも実在する。

お風呂は、今皆様、一日1度はシャワーか、お風呂に入るだろう。有料老人ホームさえ、まあ自分で入ることができる自立浴という範疇に入る人は、希望すれば概ね毎日入れる可能性はある。が、入浴そのものに介助が必要な高齢者は、毎日というわけにはとてもじゃないがいかない。大便かなんかでひどく御尻が汚れていた場合なんかは、それでも優先的にお風呂に入れて洗浄してくれるだろうと思ったら大間違い。

入浴日は週2回を確保すれば厚生労働省的にはOkなんで、重度の特別浴と言われる機械浴などは、浴室の衛生管理を考えて入浴日の順番の直前に、快便してしまうと入浴がキャンセルになってしまうのをご存知か?0―157も所属する大腸菌が増えるというのがその理屈である。普通、お尻が汚れたら、お風呂と判断するのは、老人ホームでは必ずしも常識ではないことをご記憶くださいませ。

2005.08.24

辻本ゆめの