【第7回】有料老人ホーム実態編(3)

2019年3月18日

このじめじめと高湿度の暑い日が続くところにまだまだ入浴の話で恐縮する。

毎晩、それも自分の好みの温度で浴槽に気持ちよく浸かって、あがってからは汗をふきふき、ぎんぎんに冷えたビールをプシュッとあけるのは、日本人の夏の楽しみの1つであろう。ようは、前回も少し問題にした、老人ホームにおける入浴確保は身体の清潔保持の目的に過ぎず、気分転換をめざすものでは必ずしもないという認識のずれを特に感じるのがこの記録的に暑い夏に老人ホームを巡回していて感じてならない。

省人手を狙った新しい機械浴は、乗用車のボディ洗いのドームによく似ている。もう少しわかりやすく説明すると、のMRIような寝台に高齢者は仰向けに横になる。カプセルのような筒に首から上と足の先がでるような人間ドームに入る。すると、筒の中で温水、ボディソープなどが噴射されて、人間の身体を乗用車のように洗い上げてくれるのでる。

まさか、ワックスまではかけないだろうが、全身リンスの上、やさしくブラッシング仕上げなんかは可能であろう。座位がとれるなら、家庭用サウナのようなボックス型の前が冷蔵庫みたいに開いて、首から下はすっぽり入る入浴機もある。人間ドラム式洗濯機ともいえるかもしれない。やはり、スチーム状のお湯が噴きつけて、身体を洗ってくれる。どちらもちょいと新しい老人ホームに行けばご試乗?できる。なんでも一台500万くらいらしい。浴槽とすれば高いし、入浴車といえばまあそんなもんかという値段だろう。

実はここだけの話であるが、わたし辻本は、いわゆるストレッチャーから浴槽にスライドさせるごく一般型の機械浴にすっぽんぽんになって入れていただいた貴重な経験がある。病室のベッドの上ですっぽんぽんにされて、バスタオル一枚かけてもらっただけで、公道である廊下をストレッチャーで運ばれる気持ちは本当に恥ずかしいものであるから、ぜひ経験してみるべきだろう。

一般的に機械浴はベッドで着脱するので、脱衣場スペースがはじめから設計されてのがほとんどである。廊下をカーテンで簡単にしきったりしているだけである。だから、冬は悲惨なものがある。風がとおる廊下は本当に寒くて、バスタオル一枚で入浴を待つ身は本当に辛い。心やさしい介護実習に来ている学生さんはよくお年寄りが可愛そうだと感想をもらす。

一般浴という、職員の一部介助や見守りがある、お風呂は、公衆浴場と大差ない。しいて言えば、浴槽の出入り口がスロープで、手すりがついている程度。5-6人の裸の高齢者がシャワー椅子に座りT-シャツに短パンに首にタオルをまいた職員2人ぐらいがシャワーをもってうろうろしている。もうもうと湯気の中に浮かび上がる光景は、結構不思議な雰囲気がある。このサウナよりきつい中介助と言われる仕事はやはり、850円の時給でがんばって働いてくれるパートさんとバイトさんに頑張ってもらうしかない。正職員は、脱水症もおこしかけないこんな介助はあまりしないように気をつけている。

高級有料老人ホームになるとソープ並みのサービスを受けることも夢ではない。水着は着ているが、若い職員が足の指の一本、一本から、頭のてっぺんまで、懇切丁寧に洗ってくれる。「お湯加減はいかがでしょうか?おかゆいところはございますか?」などと聞かれると、「もう少し、熱めにしてくれる?」なんて会話が飛び交う。脱衣場の扇風機にあたりながら、プシュッとプルアップしたぎんぎんに冷えたビールを差し出されるというわけである。なかなかのサービスではございませんか?

今回もお風呂の話で終わってしまったが、次回はお食事の話に入ろう。食うくらいしか、楽しみがないという、貴方!ぜひお楽しみに。

2005.09.02

辻本ゆめの