[31]なぜ子供を産まないのか?(上)

2018年8月25日

今回は所謂少子化をテーマにしたい。
少子化は現在の日本社会を悩ましているテーマの一つだろう。しかも、かなりこの問題重症ときている。少子化が進めば年金財政の維持どころか、社会全体のGDP(国内総生産)の低下は避けられず国力低下に繋がる重要課題だ。政治家や官僚たちはこの問題にかなり頭を悩ましているが、現在のところ全く解決のめどはたっていない。
ある馬鹿な政治家は「子供を生まない女性を税金で面倒を見るのはおかしい」などとおよそ知性を疑う失言までする始末。愚かな妄言だが、それほど政府を悩ましている深刻な問題とも解釈できる。今回は福祉界の猛獣使いが国に代わって解決策を論じたい。
実を言うと当初、今回のテーマに関しては、もしかして福祉のメルマガとは関係ないのではないかと掲載を迷った。少子化についてはもっと他のジャンルのメルマガ、例えば社会学や女性論で論じるべきではないかと感じたのだ。しかし、この少子化の問題をよく掘り下げて考えてみたら、問題の核心が福祉の分野とかなり重なることがわかった。なぜ女性が子供を生まないのか?問題は意外なところに原因が直結していた。
合計特殊出生率というのをご存知だろうか?現代女性がいかに子供を生まないかについてはこのキーワードが重要になってくる。合計特殊出生率とは15歳から49歳の年齢の女性を出産可能年齢と仮定し、彼女たちが一生涯で何人子供を生むかを現したものだ。一時期この数字がなんと1,29を記録したことがある。今は第2次ベビーブーマー世代が頑張って1,33ぐらいだが、それでもとても人口の現状維持に必要な2点台には及ばない。いずれにしても少子化は改善されず、人口減少に歯止めが全くかかっていない。
この現状に関しては多くの意見が寄せられている。女性の高学歴化や社会進出による晩婚化、教育費など育児費の高騰化、児童に対する社会保障が少ない。出産費用が高いなど・・・・いろんな意見がある。勿論それらが間違っているわけじゃないのだが、少子化の致命的な要因には何かが欠けていると俺は感じるのだ。
例えば女性の社会進出が少子化を招いているとの指摘があるが、むしろ女性も働く方が子供も増えているデータがある。また児童手当などの社会保障が充実していないといっても今よりも昔の方が児童の社会保障はもっと劣悪だったが、それでも出生率は現在より高かった。教育費の高騰は確かにあるが、生まれた子供が全員高い教育費がかかるわけじゃない。ましてや教育費のことは生んで十数年経ってから本格的に問題になってくる。子供を生むときに「この子は頭が良くて教育費がなまじかかるかもしれないな・・・」と心配する親はいるのだろうか?これらの要因は確かに小さくは無いが、それだけではやはり少子化を説明できない。
少子化を議論するときにはよく子供を産む母親の問題だけしか見ない傾向があるが、俺はもう一つの要因を議論するべきだと常々思ってきた。もう一つの要因、それは男性である。当たり前のことだが子供は女だけで作るものではない。そこには男の存在が必要なのである。勿論多様化が進む現代社会ではシングルマザーという選択肢もあるだろう。だがそれは最初から望んで片親で養育するケースは無いだろう。離婚などいろんな事情があってシングルマザーという選択をしたのであって、男性の存在が不要と言うわけではない。
特に20代から30代の若者男性の経済的状況を見れば原因は一目瞭然だ。企業が不景気のため、人件費を抑制した結果多くの若者が犠牲になった。90年代半ば、中高年の雇用を守るために新規採用を見送った企業は多い。正社員になる若者は減り、年収300万円どころか、200万円台、100万円台、フリーター、ワーキングプア、派遣社員・・・多くの若者とりわけ20代や30代の男性の多くは自分が食うのが精一杯と言う人は多い。これでは結婚するどころではないではないか。よく考えれば俺もそのうちの一人なのである。まさに今の若者は中高年に搾取されていると言っても過言ではない。よく考えれば政治家、企業、労働組合、官僚など社会の意思決定の力があるのは中高年ばかりだ。彼らが自分たちの既得権を守るために若者が犠牲になっている。それがこの社会の現状だ。
今回はかなり長くなってしまった。次回のメルマガでは少子化の要因にもっと踏み込みたいと思う。
今回も言っておくがこのメールマガジンは誰かに一つの行き方を強要するものではない。このメールマガジンで俺はかなり物議を醸すことを敢えて言っているが、「女性は社会のために子供を産むべき」などと無神経極まりない事を言うつもりは無い。よく結婚しているカップルに「子供はまだ?」などと聞く人は必ずいるが、かなり失礼極まりないことを指摘しておく。結婚しても皆が皆必ず子供を持つわけではない。ある人は子供を生みたくても何らかの理由で産めないのかもしれない。そもそも子供を生むか生まないかは本人の勝手だ。
エル・ドマドール