ジャカルタの大洪水

インドネシアのジャカルタで大洪水がおき、市内の道路の約7割に損壊が見られ、30万人が家を失いました。首都圏に及ぶ洪水と土砂崩れで100人以上が亡くなったという大変な災害です。ところが皆様はこのニュースをどのくらいご存知でしょうか。インドネシアとビジネスをし、ジャカルタに知人の多い私は彼らの無事を聞きまくり、雨季でしばらく豪雨が続くこともあり地元の英字紙を読むのが日課となりました。

 「インドネシアなんて知りません。バリは行ったことがありますけど。」という笑い話があるくらい日本人はインドネシアに関して無知です。上場企業の管理職の方でも「どこにあるか知らない」方もあります。また、暴動ばかりおこる危険な国と決めつけている人も少なからずいます。

 日本の二国間ODAで最大の供与国はインドネシアです。全体の15%のお金が投じられています。また、日本の輸入相手国でも第5位で天然ガス、海老などの食品、木材、家具と毎日の生活でお世話になるものばかりです。インドネシアにとっても輸出、輸入の相手国の第一位は日本です。日本人の旅行者も何と1年に60万人以上でフランスへ行く人より遥かに多いのです。そんなに身近な国でありながらなぜか日本のマスコミは取りあげませんでした。欧米の出来事ならもっとくだらないニュースでも取り上げられますが、アジア全般に関しては外交問題か事件性の強い記事しか出て来ず、おのずとアジア蔑視に誘導されているような気がします。

 今回洪水情報を調べているうちに驚くことがいくつかありました。過去最大級の洪水とあってメガワティ大統領がゴムボートに乗って視察に行く写真が地元紙に出ていましたが、東京がそんな状態になったら天皇陛下や小泉首相はゴムボートに乗って視察に行くのでしょうか。石原都知事なら行きそうな気もしますが。

 知人の中には自宅は浸水したままオフィスに出て仕事をしている人もいました。しばらくは洪水見舞いが挨拶がわりの毎日でしたが、自宅が浸水していようとも「心配してくれてありがとう」と丁寧に何度もお礼を言う彼らに洪水慣れしていると言えばそれまでですが、そのたくましさや心のゆとりに感動しました。まさに自然と共存しているといった感じです。

 ジャカルタ特別州政府のインフラ整備の悪さが指摘され、天災より人災との声があがる中、中央政府やボランティア団体が援助に動き出しています。避難所では伝染病の広がる可能性もあり、着の身着のままとなった貧困層では故郷での再出発を決意している人も少なくないようです。一方、保険会社は未曾有の求償額で保険金の支払を遅れさせざるを得ないとの情報もありました。そんな折、NGO団体が結集して行政を相手に集団訴訟を行う動きが出ていました。やるべきことはやる、なかなかの行動力ではありませんか。
 来月上旬にジャカルタへ行く予定ですので自分の目で洪水のつめあとを見ることができると思います。早く乾季が来て彼らの心の痛みも熱帯特有の青空のようにまぶしく晴れ上がることを祈っています。

2002.02.21

河口容子