[144]中国に拡がる日本の食文化

 香港の貿易機関の日本事務所のトップとパーティで立ち話をした時のことです。「香港の方は日本に来られるのがお好きですね。」と私は言いました。彼もたしか2度目の駐在です。「そりゃあ、食べ物がおいしいから。」とお得意の日本語で答えてくれました。香港の観光のプロモーションでは「香港の料理のおいしさ」を強調しているのにあれは嘘だったのかと一瞬思ったくらいです。
 私が起業してからも香港からの出張者をずいぶんお世話しましたが、おもしろい傾向があります。結構偉い人でもあまり高いホテルには泊まろうとせず、そのかわり、食事にはお金をかけ、私などにもばんばんご馳走してくれます。香港人にとって食はパワーの源、楽しい会話のひとときでもあるのでしょう。
 先日、中国で行なわれた外国料理に対するアンケート結果が発表されました。全体での1位は韓国料理で、もともと朝鮮族が多く住むことから不思議ではない気がします。2位は日本料理、僅差でフランス料理やイタリア料理を抜きました。特に上海の女性は日本料理を圧倒的に支持し、広東では男女ともに日本料理に高い関心を示しています。
 香港にはすでに 300軒を越える日本料理店があると聞きましたが、日本人の居住者や観光客目当てではなく、もはや作っているのは日本人、お客さんは中国人という定着ぶりのようです。東南アジアをまわっていて感じるのは、高い地位や高学歴の人ほどあたかもステータスシンボルのように「日本食が好き」と連発します。私自身は海外でわざわざ日本食を食べたいと思うほうではないのに現地の人たちに無理やり引っ張って行かれることもあります。日本食を食べる絶好のチャンスと思うのでしょう。たしかに日本食というのは、見た目の美しさや季節感、器とのハーモニーといった芸術性、素材を生かした繊細な味わいという特徴を持っており、気候風土や文化の異なる外国人が本当に理解しているのか疑問に思うことがありますが、生命を維持するために食べるという次元から遠くなればなるほど、良さのわかるものであることは間違いなさそうです。
 日本食の進出とともに日本酒も中国で人気を集めています。上海中心部で行なわれた試飲会では8割の人が「おいしい」と答えています。参加者のうち6割は日本に来たことがなく、日本と直接関係のない人でもおいしいと答えるということは市場としてはかなり期待してもいいのではないでしょうか。最近は丹精をこめて作られた日本の野菜や果物も中国の大都市や香港では高い価格で売られていると聞きました。
 これはまったく違う目的で上海の若い女性を対象にしたアンケートの結果ですが、「日本製品と日本や日本人に対する感情は別」「日本は技術が発達しており管理も行き届いているので品質が良い。」「容器や包装のデザインが良い。」と多くの人が答えていることです。実に冷静でフェアな回答だと思います。ブランドや流行に踊らされている日本の若い女性たちにも聞かせてあげたいくらいです。
河口容子
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