[176]気候は性格を作る

 2005年 5月19日号で「中国ミッションのラッシュ」を取り上げましたが、今年はアセアン諸国のミッションのラッシュです。すでにインドネシアとブルネイをご紹介しましたが、国別、複数の国をまたがった地域や展示会がついているものと実にバラエティにとんでいます。
 先日はベトナムへの投資セミナーがありました。ベトナムは日本と同じように南北に細長い国で、国土面積は日本の約 90%で人口は約8500万人です。北のハノイと南のホーチミン(旧サイゴン)が代表的な都市ですが、南は熱帯性の気候で乾季と雨季がある一般的なアセアンのイメージですが、北は亜熱帯性気候で四季があります。夏は38度くらいになり、冬も10度以下になることがあります。私の勤務していた総合商社ではかつてベトナムに石油ストーブを輸出していたことがあり、そのことを知っていましたが、多くの方がベトナムは常夏の国と勘違いされているのではないでしょうか。
 セミナーで講演をされたJICAの専門家はベトナムに10数年住んでおられるようですが、南の人の性格は実利主義、明朗快活、開放的であるものの、飽きっぽい面もあり、北の人の性格は教条主義、陰気、閉鎖的だが忍耐強い傾向があると指摘されました。2004年 1 月8日号「春はあけぼの」でも触れたことがありますが、やはり気候は性格に大きな影響を与えるような気がします。日本も四季がありますが、三寒四温に代表されるように季節の変わり目は不安定なお天気で、Yes、 Noがはっきりしない国民性を作り、また自然災害が多いことから「転ばぬ先の杖」や「取り越し苦労」が生まれると感じます。四季の変化を楽しむというより追い回されているように感じることすらあります。
 さて、ベトナムに話は戻りますが、南のホーチミンは商業都市、北のハノイは政治の都市ですが、海外からの投資は圧倒的にホーチミンがハノイの約 3倍の件数で多く、一人あたりの GDPもホーチミンがハノイの 1.5倍あります。ところがおもしろいことに韓国、台湾からの投資は小型案件が多く南部に集中するのに対し、日本は件数では南部が多いものの、大型案件は北部に集中しています。私が察するには大型案件は高度のスキルを必要とする人材が必要でハノイには有名大学がたくさんあること、また今後のインフラ整備により香港や中国の広東省と陸路で商品や素材を往来させることが可能だからでしょう。また、北の人のほうが日本人に気質的にも似ているような気がします。
 2005年 9月15日号「ベトナム ナショナルデーを祝う」でも触れましたが、ベトナムは日本語が上手な方がたくさんいらっしゃいます。日本語とあわせて専門の知識を持つ人材が年に 200-300人は大学を卒業してきます。日本の少子化による若手エンジニア不足を補うため日本へ日本語のできる若いエンジニアを送りこむプロジェクトの話も聞いたことがあります。似ているところの多いベトナムと日本ですが、最大の違いは30歳以下が人口の半数以上という若い力にベトナムが満ちていることです。私も昨年末から日本のクライアントのためにベトナムでのものづくりのお手伝いを始めており、その優秀で勤勉、かつ豊富な労働力に期待するところ大です。
河口容子