中国から日本に帰化したビジネスウーマンJさんから面白い話を聞きました。ある日本人家族が親しい中国人にお土産を持って行くことになり、日本人の奥さんとお子さんで手作りをしたものを差し上げたところ、中国人は「自分で作ってくれたものをくれるなんて。何てケチな日本人!」 とJさんにこぼしたそうです。 Jさんが日本では手作りのほうが心がこもっており、オリジナリティがあるので特別な意味があると何度説明してもその中国人は納得しなかったとか。
確かに途上国では手作り製品があふれており、工業製品のほうが有難がられる傾向にあります。また、相手がいくらお金を出してくれたかだけが評価基準の人も日本も含めてたくさんいる事は事実です。しかしながら、ギフトというものは本来感謝やお祝、励ましなどの気持ちを物に託したものであり、どのような気持ちでその商品をどんな風に選んだのかが大切であると思います。また、相手の喜ぶ顔や御礼の言葉が何よりのお返しであったりもします。ギフトはいわば双方の心を映す鏡とも言えます。
2007年 7月 5日号「アセアン発の美と健康」の最後のほうで出てくるシンガポールのクライアントに差し上げたのはハロー・キティのネクタイです。日本から持って帰るのに荷物にならないこと、日本らしいお土産であること、賄賂ではありませんので負担にならない価格のものという枠で、華僑世界のセレブである彼らにふさわしいものを探すのに数日考えた結果です。40代の専務と30前後の部長に紺地と淡いピンク地のものを選び、好きなほうを取っていただくことにしました。シンガポールでもハロー・キティは大人気ですので、カジュアルなパーティにでも使っていただければ話題になること間違いなしです。軽装が多い東南アジアのビジネスマンの中でこの二人はスーツにネクタイ姿が実にダンディです。このネクタイはハロー・キティの顔の輪郭が水玉の変形パターンのように見える柄です。目鼻がついているわけではないので子どもっぽいものでもありません。
専務からいただいたメールは「部長より年上の私にとって色選びは難しいものではありませんでした。こざっぱりとしていて、私のワードローブ(持ち衣装)にぴったりです。」紺地を選らんだこと、気に入ったので使います、という意味を実にエレガントに表現したものでした。
中国や東南アジアに出張する際は、相手がわかっている場合はその方にあわせてお土産を準備して持って行きますが、思わぬところでお世話になる方もあり、そんな時用にスモール・ギフト(粗品)を余分にスーツケースに入れて行きます。ブランドものや日本モチーフのハンカチや美しい缶に入った小さなお菓子なら嵩張らず、だいたいの方が喜んでくださいます。日本でお会いしたことのある香港人のキャリアウーマンに広州でばったり再会、日本モチーフのハンカチを差し上げたところ「私は日本製品が大好き、ありがとうございます。」とハンカチを大事そうになでてからしばらく見つめていたのが印象的でした。実はこの準備するハンカチはすべて色や柄を変えて用意してあり、差し上げる方の雰囲気に最も合ったものをその場で選ぶことにしています。
河口容子
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