メコン地域投資促進セミナーに行って来ました。カンボジア経済特別区委員会副長官、ラオス投資計画省投資促進局長、ミャンマー外務省国際機関・経済局長、タイ投資委員会国際部長、ベトナム計画投資省国内経済局副局長という実務レベルトップのメンバーが勢ぞろいし、日本・メコン交流年であった2009年をしめくくるにふさわしいセミナーでした。とはいえ日本人にとって投資活動からはまだまだなじみの薄い国々もあるのに250名の定員があっという間に埋まったそうです。
12月10日号「ベトナム新しい展開」でも触れたようにベトナム関連のセミナーも満杯、11月にコンサルタントを務めさせていただいた「ヨルダン イラク パレスチナ展」でもこの3ケ国についてそれぞれセミナーが並催されていましたが、いずれも大変なにぎわいでした。途上国に寄せるビジネスマンたちの関心と一般メディアによる報道記事にはどうも温度差があるような気がしてなりません。国際化をさらに進展させようと羽ばたく人々と自分の身の周りの事だけで精いっぱいになっている人々という二極分化も始まっているような気がします。
この地域についてはすでに何回かこのエッセイで触れております。関連記事を書きだしておきますのであわせてお読みいただければ概要や執筆時との変化をおわかりいただける事でしょう。冒頭の 5ケ国に中国を入れた 6ケ国が GMS(大メコン地域)ですが、 1人あたり GDPの順で言うとタイ(4,115米ドル)、中国( 1,300米ドル)、ベトナム( 1,040米ドル)、ラオス(840米ドル)、カンボジア(818米ドル)、ミャンマー(462米ドル)となります。人口順では中国(1,300百万人)、ベトナム(86百万人)、タイ(66百万人)、ミャンマー( 59百万人)、カンボジア(14百万人)、ラオス(6百万人)となります。この経済格差(つまり労働コストの差)を活用して国際分業を行い、共に発展しようというのが今のメコン地域のめざす方向です。
たとえばタイには 7,000社以上の日系企業が進出しており、自動車産業や家電などの精密部品やハイテク製品に国際競争力を持っていますが、生産コストが上昇しています。そこでタイの工場を閉鎖せず、ラオスで労働集約的な作業を行い、タイで最終組み立てを行い、タイ国内で販売する、もしくはタイから輸出するというパターンがあります。
あるいは中国にマザー工場を置き、ラオス第2工場、さらにタイで最終組み立て、そこから輸出というパターン。中国にマザー工場を置き、ミャンマーが第2工場、あるいはベトナムがマザー工場でカンボジアが第2工場というように無数の組み合わせが考えられます。それぞれのお国事情もありますが、現在道路網の整備や通関制度の簡略化が進んでいます。
以前、ベトナムの貿易促進機関の副長官と雑談をした際に「日本人はアセアンの後発国であるラオス、カンボジア、ミャンマーとはビジネスでのつながりが少なく、域内での格差が広がった場合、アセアンとして連帯が危うくなるのでは」と私が言うと「それでは日本からの投資がふえているベトナムが架け橋となれば良いでしょう。ベトナムにとっても新しいビジネス・モデルとなるし、日本も後発国もそれぞれにメリットがあります。」と即座に答えられました。賢人で有名な方でしたが、国境紛争の絶えなかった国々がそれぞれの違いを生かしながら協調しあおうという時代に入りつつある事は確かです。
河口容子